|行政:北海道福島町標高:170m
|1/25000地形図:千軒(函館11号‐4)調査:1999年8月


 福島峠は北海道の南の端、福島町のなかにある峠。TMLなどでは国道228号のトンネルが福島峠としているが、歴とした峰越えの福島峠がその上部に存在する。ただし、完全なる廃道である。





 そもそも福島峠は藩政時代に「蝦夷三湊」として知られた江差、松前、函館を結ぶ福島街道に相当する道であった。北海道最南端の吉岡峠と並んで街道の隘路であり、重要視された峠であったという。現国道の福島トンネルを知内から越えようとすれば、トンネル入り口に向かって右手に旧道は登っていく。峠までは数分もかからない。峠は鬱蒼とか陰鬱といった形容がぴったりな薄暗い森である。


 問題はそれ以降の峠道。峠のなかほどで少々崖が崩れ、それより福島方面の道はことごとく草の海の中である。蕗、クマザサ、中空の草(おそらくアイヌ語でクッタラ、虎杖なる植物)が旺盛に繁っているため、なにがしかの武器が必要。基本的に現国道に沿って下って行くのであるが、当然のことながら山のひだに沿って行くために相当な距離がある。所どころ崩落もあり、倒木、道から生えている木などもあって、全く道の体をしていない。現国道もこの道からかなり離れた位置を抜けていくため、車のエンジン音すら聞こえず、寂しい限りである。
 一度だけ国道の法面の上に出てくる部分がある。この前後は特に道が判別し難い。嫌になって「このま法面を下ったほうが楽かも」などと思ってしまうが、ここも高さ数十mの崖である。選択は熟慮の上で。旧道はこの先大きな谷を迂回して、千軒屋雨量計のある広場の奥に出てくる。


 

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