ちょっと待て,堀.
何で胸壁が
長手積みなのよ!

 …

 …

 …非常にマニアックな突っ込みで申し訳ない.実際この時,この突っ込みに反応してくれる人などいないのではないかと思った.花月の芸人ならドン引き間違い無し.しかし報告者にとっては西側額の巨きさなど比較にならないほどのサプライズだったのだから勘弁していただきたい.


 フランス積み          イギリス積み

 煉瓦には2種類の積み方がある.一つはイギリス積み,フランス積みなどの「奥行きがある積み方」.上の図を見ていただければ判ると思うが,この積み方では奥行き方向に煉瓦2個分の幅ができる.2列目で組む方向を変えれば3列のものもできる(フランス積みは間に半個の隙間が空くが).上下の煉瓦も互いに入れ子になるから,全体として頑丈な一枚の壁になる訳だ.

 しかし長手積みだと,煉瓦1個分の厚みにしかならない.例えこれを2枚貼り合わせたとしても,それは互いに組み合わされないから独立した2壁である−−−その貼り合わせ面が剥離したりしようものなら−−−.普通ならポータル胸壁なんていう強度の要求される場所に長手積みなど使わない.事実,日本中の鉄道由来の煉瓦構造物を調査したという小野田滋氏のデータにも,ましてや近代土木遺産リストにも,そんなものは存在しない.よく街中で煉瓦を模したタイル貼りの装飾を見かけるが,たいていそれは長手積みになっているはず.あれだって本当はありえない構造なのだ.

   堀め.何を思って長手積みなのか.

 

 

 

 

 そんな気になる東側ポータルの上.残念ながらコンクリート擁壁が増設してあって,上に登って確認することもできず.シャベルか何かを持って来てたら間違いなく掘っていたただろう.堀だけに…

 と,寒いギャグを思いながら帰路についた.

 なお,隧道の下には1996年に新岡阪トンネルが完成.岡阪隧道は地味に共用年数90年で,かつ現役だったりもする訳だ.それから,ポータル西側は普通にイギリス積み.まさかあのでっかい額を掲げるために頑丈にしたんじゃないだろうな>堀.

教訓:下手に名を残すとどこの馬の骨ともわからん奴に突っ込まれる虞れあり


 

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