|行政:福島県猪苗代町〜郡山市標高:・691m
|1/25000地形図:関都(福島15号-2)調査:2002年8月


 会津若松から東国の玄関口・白河の関へ向かった白河街道の峠。現在は国道46号上の中山峠(中山トンネル)がその役を担い、その北約3kmの山中で楊枝峠は眠っている。

 楊枝峠の名前は峠の西側にある楊枝集落から命名されている。余談になるが、国土地理院の地形図では「中山峠(楊枝峠)」とカッコ書き。このように2つの名前が併記されている例は、報告者の知る限りではここと関西の差杉峠(西杉峠)だけである。

 猪苗代湖畔の国道49号から楊枝ヘ向かうには、国道沿いにあるセブンイレブンの脇から入るのがわかりやすい。すぐにJR磐越西線を越え、広くなだらかな谷へ。磐梯熱海自動車道と並走しはじめる頃には民家も見えなくなり、このあたりにもう一つの分岐ポイントが現れる。峠道は自動車道の向こう側に伸びているので、この自動車道の下をくぐるトンネルのいずれかを抜けねばならないのだ。自動車道をくぐれば砂利道となり、林の中では恐い顔をした不動さんが自動車道を睨んでござる。あとはこの道が峠まで連れて行ってくれる。


 が、報告者の訪れた2002年の時点ではここからが大変であった。林の中へ入ってすぐに沢崩れを起こしており、1車線の車道幅はその縁をわずかに残して消え失せていた。その先も勾配を上げ始めた道がまるまる沢跡になっており、荷物を積んだままの報告者は自転車共々苛められることになる。それでも道の傍らには湯殿山碑や一里塚などが残っており、特に一里塚は道を挟んで2つ残っており、道の両脇に作るよう定められた当時そのままの姿を残している。

 どんどん勾配を上げて行く道は峠直下でつづら折れとなる。車も通ろうかという幅にコンクリート敷きながら、深さが数mもある壕のような道である。登山道もかくやと思わせる大迫力だ。これを押し上げればようやくに峠。峠付近に高圧線が通っていて、その整備のためにこちらから車が入っていたようである。峠そのものには何もなく、少々拍子抜けの感がしないでもない。


 峠より東側は一転して轍が失くなり、街道だった頃の道を純粋に残している。大変趣のある道だが、手が加えられていないことが逆に仇となって、その多くはぬかるみになるに任せている。時には足首まで踏み抜けてしまう所もあり、自転車を引きずり回すように舗装車道へ出る直前では沢で崩されている所もあるが、それ以外は道としてよく残っている。またこちら側にも一里塚があり、高さが3mもありそうな立派なものであった。

 

 

 

 

  この道を2kmほど下ると、自動車道わきの舗装道に合流する。大きく下って右折、13番の高架を潜って中山駅のすぐ隣の踏み切りに出る。分岐に看板等は一切なく、こちらの側から行こうとする場合にはかなり迷いそうである。



 

 

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