仏峠

　夏の中国地方でいちばん厄介なのがアブだ（担ぎに悦びを見い出せる人のことに非ず）と知ったのは、この尊い名前の峠に登った時のことであった。そばを流れる沢があまりにもきれいだからだろうか、登っている最中も峠で休憩している時ものべつくまなくアブにたかられ、ただただタオルを振り回して防戦した記憶しか無い。喰われはしなかったものの、噛みも仏もないとはこのことだ。つまらない？　ほっとけよ。

　・・・その後、夏の東北でも同様の現象を経験することになる。範囲と密度（としつこさ）は東北のほうが上であったような。峠西の薮にひっそり開通記念碑あり。