鐘ヶ坂隧道

　海でばったり出会った鮫がごめんと涙ぐむようなすごい人というのはやはり実在する。私はこの破砕寸前の隧道を、腿まで水に浸かりながらも自転車を担いで抜け、それだけで満足しておったのだが、あまつさえこの隧道の存在を知るのみならずその上に古い鐘ヶ坂峠（無論峠のみ）が残っていることを確認しかつこの隧道が日本で２番目に古い車道隧道であることを電子メヱルで教えて下さった方がいる。そう、私はいつも二番なのだ。
　負けてはならぬとのちに学んだことだが、明治16年完成のこの隧道より以前に初代栗子隧道（明治14年・素掘り）や第五碓張隧道（明治12年・素掘り）、黒崎隧道（明治9年・石積み）などが作られている（明治初年に作られたという福浦隧道が隠岐島にあるが、これは車道かどうか不明）。とは言え現存する車道用煉瓦隧道としては最古のものであることは間違いない。必ずしも２番という訳ではなさそうだが、当時のメヱルが残っていないため、私の記憶違いであったかも知れぬ。