|行政:京都府綾部市〜三和町 標高:270m
|1/25000地形図:綾部(京都及大阪9号‐3) 調査:2001年8月

■調査 Experiment

 実はこの峠,報告者は正式な読み名を知らずに越えた.「しちやま」なのか「しつやま」なのか,はたまた意外な難読地名なのか.新トンネルに「須知山トンネル」というよく判らない名称がついているのも災いして独り混乱していたのだが,何のことは無い,「しつやま」で良かったのだった.国土地理院の地形図検索システムでもそう言っているし、先の榎峠麓の質志が「しづし」であった.


 それはいいとして,質山峠の旧道は行程最後の険である.新道トンネル直前から分岐した道は浅く狭い谷いっぱいにカーブを描いた後,トンネル上部の峠へと向かう.分岐では1.5車線だった鋪装の道も,ここから先は両側から草が覆ってきて,実質的には1車線となってしまう.

 

 峠ではさらに薮が濃くなり,護壁も苔むして緑一色の世界である.人づてに聞いた話では1999年頃までは173号の看板があったというが,現在は三和町と綾部町の町名看板くらいしか残っていない.あとはただ,草とわずかな鋪装ばかりである.

 これで国道173号旧道を辿る旅は終わる.池田のビッグハープ(阪神高速池田線新猪名川大橋)を思い起こさせる斜張橋・新綾部大橋を渡れば,そこが「いなさん」の終点である.ちなみにこの橋が完成する以前の綾部大橋は,ボーストリング・トラス橋(ポニー曲弦)としては日本最多の経間をもつ立派なものである.日本土木学会が選定した「日本の近代土木遺産2800選」の中でもAクラスの指定を受けている.

■考察 Discussion

 ここで改めて国道173号の歴史を振り返ってみたい. 現在の路線は昭和37年5月に173号の指定を受けているが,この時点では大阪府池田市から京都府瑞穂町までの区間だけであった.その後,1975年4月に綾部市まで伸び,このときに榎峠,質山峠も国道となっている.
 須知山トンネルは1977年3月の完成.完成後はもちろんトンネルが国道となった.質山峠が国道として機能していたのは,わずか2年間だけだった,ということになる.

■参考文献 References


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