旧池田隧道(神通側)
半分ほどが土に埋まっていて,坑口の全ては見えない.開口部の小ささもあいまって土管か何かのようにも見える.しかし接近してみれば,ほとんど損傷のない美しい煉瓦ポータルの,旧池田隧道だ. 笠石の下には煉瓦を斜めに配したデンティル.アーチは3重の煉瓦であって,遠く離れた福岡県の欅坂隧道や金辺隧道を思い出させる.そうして綺麗なフランス積みのスパンドレル.
明治16年竣工の鐘が坂隧道の煉瓦は表面が剥離して凸凹になっていたが,この旧池田隧道のそれには一切見られない.湿気をもった褐色の肌が苔の下でしっかりと息づいている.子細に見ればこの煉瓦,形が微妙に不揃いであって,間をつなぐコンクリートの目地も少々荒い.端正さという意味では劣るが,いかにも手仕事といった温もりが感じられて逆に好ましい.
内部に入ってみる.煉瓦と煉瓦をつなぐコンクリートから石灰分が溶け出して,壁のあちこちに白い塊を成している.鍾乳石と化した一部は4〜5cmもあろうか.そして残念なことに,ポータル裏面に相当する所を,アーチを半周する形で走る亀裂.この隧道もまったく安泰という訳ではなさそうだ. |
![]() | ||
![]() |