|行政:兵庫県篠山市〜柏原町標高:300m
|1/25000地形図:柏原(京都及大阪14号‐3)調査:1996年8月,1997年3月,2001年8月,2004年10月


■背景 Background

 兵庫県篠山市の北西端,柏原町との境近くに、かつては山陰道京街道の宿駅であった追入(おいれ)の集落がある.追入から大江川に沿って右手に進めば,丹波へ向かう国領峠(瓶割峠).左すれば但馬への鐘ヶ坂峠,現在は鐘ヶ坂トンネルで国道176号が抜け,京阪と福知山を結ぶ交通の大動脈となっている.ここで報告する鐘ヶ坂隧道は,その鐘ヶ坂トンネルの上にひっそりと在って,明治中期から50年に渡ってその役割を果たした煉瓦作りの隧道だ.
 報告者は1996年,瓶割峠へ向かうつもりでこの地を訪れ,偶然にこの隧道と遭遇した.手持ちのツーリング用地図はもちろん地形図からも抹消されており,思い掛けない邂逅に狂喜したものだ.しかも調べてみれば明治十六年竣工であり,現存する道路用煉瓦隧道の中で最も古いという.そんな価値ある隧道が,人々から忘れ去られ草に埋もれているという事実に惹かれ,報告者は何度も足を運んだ.そうしてその度に発見があり謎が増えて行く.敢えて言う.鐘ヶ坂隧道はタダモノではないのである.
 平成14年には新鐘ヶ坂トンネルが開通.このトンネルにも孫ができた.皮肉なことにそれと連動して歴史的価値が見直され,公園の遊歩道としての活用も検討されているという.ここでもまた歴史が転回しつつあるが,その重心となるべき鐘ヶ坂隧道史は闇に埋もれたままだ.本報告書ではサイクリングの枠を越え,徹底的にその闇に迫ってみたい.


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