|行政:京都府船井郡丹波町〜園部町標高:300m
|1/25000地形図:園部(京都及大阪10号-1)調査:1997年11月,2004年10月


■背景 Background

 京都府は中央分水嶺によって南北に分かれている.その両者をつなぐ大動脈が国道9号であり観音峠隧道である.麓との標高差はそれほど大きくないものの,隣り合う丹波町と園部町の間に気候の差風土の差をもたらしている,小さくて大きな峠である.
 観音峠隧道は昭和10年竣工.古参の部類に入るが2車線幅の大隧道であって,今日の交通量によく耐えている.では,隧道の名前にもなっている,それ以前の道であったはずの「観音峠」はどのような姿で,どこを通っていたのか.それが報告者の長年の疑問であった.

 報告者が国道9号のこの区間を初めて走ったのは,もう10年も前になる.その時は国道の観音峠隧道を抜けた.抜けながら「観音「峠」隧道というからには観音峠もあるのだろう」と単純に思ったが,それは大阪〜舞鶴間を往復している途中のことであって,勿論旧道を探す余裕などなかった.のちに中央分水嶺に興味を持つようになり,改めてこの付近の地形図に目を通したのだが,「観音峠」は記されていず,隧道のある谷には破線道の表記もなかった.小さな疑問はこの頃から脳に刺さったままであった.
 次に訪れたのは1997年の秋.この時は別の峠─洞峠─に行くつもりで園部駅を降り,「ほんの遊びのつもりで」国道の隣の谷を越える道に入った.地形図実線道のはずのそれがいつのまにか登山道になり,山を直登し,スプリングスネアのトラップ─しかもまだ動作中─のある尾根を経て,観音峠隧道の真上に出てしまった.町境を示すコンクリート柱があり,その脇から降りて行く道に導かれ,桧の林と竹林のなかの小路を通って,西側ドライブインの駐車場に出て来た.これが旧い観音峠と峠道だろうと独り納得したが,その証拠となる写真も,裏付けとなる資料も手元にはない.
 2004年のほぼ同じ季節,改めて観音峠に赴き調査した.結論から先に言えば,真の観音峠は別のところに存在した.



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