|行政:岐阜県荘川村標高:1160m
|1/25000地形図:六厩(高山16号‐4)調査:2002年7月,2004年10月


■背景 Background

 軽岡峠は岐阜県荘川村の中にある峠.大字三尾河と同六厩を結ぶ道である.かつてこの峠は,高山と白川郷を結んだ白川街道の道筋であった.美濃の国のなかで最も奥地にあった白川郷へは,この峠を含め3つの峠越えをしなければならない.一つは高山を出て最初の難関,標高差300mを一気に登りあげる小鳥峠.夏厩から南北に走る谷を遡り,ゆるやかながら1000mを越えねばならない松ノ木峠,そして街道の馬継ぎ所があった六厩から,最大の難所・軽岡峠1160mを越えて,ようやく上白川郷(現・荘川村)に到る.白川や荘川へ赴任する役人が,小鳥峠でびっくりし,松ノ木峠で思案し,軽岡峠で辞職を決めた,などという逸話も伝わるほどに,白川郷は遠い存在であった.
 高山と白川を『近付ける』努力は長年に渡って続けられた.明治38年に軽岡峠道が大きく改修を受け,馬車の通行が可能になった.昭和36年には別の場所に新たな峰越え道・新軽岡峠が作られ,平成の始めには現国道158号の抜ける軽岡トンネルが穿たれた.さらに今日,東海北陸自動車道が山々を突き抜けて,高山へつながろうとしている.局地的に見れば,これほど道の変遷が激しいところも珍しい.そうして古い峠道は,人々の記憶から忘れ去られようとしている.

 2002年の夏,報告者は古い軽岡峠を目指して六厩から登った.地形図実線道という以外に予備知識ゼロで登った報告者を待ち構えていたのは,極限まで廃れた峠道と,潰えたトンネルであった.トンネル上の峰を越え,道を埋める若木を掻き分け,崖崩れを越え,道をロストして谷を直下し,砂防ダムを乗り越えた.あまりの極限状態でほとんど写真が撮れなかったこともあり,2004年,再調査に赴く.以下の報告はほぼ全て,2004年の調査に基づくものである.



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