軽岡峠(三尾河側-1)


■調査 Experimet

 三尾河から始めてみたい.現国道から軽岡峠への分岐は2つあって,一つは集落のなかにある大きな橋のたもとから「→魚返の滝」看板が出ている道.もう一つは国道に面した民家の裏手を通って行く道(上写真)である.後者には分岐の又に「左たか山(右?)」と彫られた道標が建つ.この道標は後者の道の古さを物語るようだが,それが指す「左」は現国道であり(つまり分岐の又のつけ根に正面を向いて立っている),古い軽岡峠は右しなければならないという事実と相反する.このことについて村の人に尋ねたところ,元あったところから移してきたとの事だ(偶然,その方はこの石碑の建立者の子孫であった).もちろん現状の通り左をとっても高山へ向かうのであって間違いではない.むしろそうしなければ,普通は高山へ至れない.ささやかな気くばりだと思う.ただし,車で通りすぎて行くだけの人々に対してはあまりに非力だ.

 小さな切通しの向こうで道は2手に分かれる.下を行けば魚返の滝の前を通って行く.階段状に裾を長く引いた,美しい滝である.上に向かえば川沿いの1車線舗装.こちらには道端に小さな祠もあって,旧い公道だったことを教えてくれる.
 両者はすぐに合流し,また分岐.右すれば建設中の国道257号,左が軽岡峠.この分岐にはもう一つ道があって,かつての国道158号だったはずのコンクリート橋が,左手の仮橋の隣に架かっている.銘板はすべて剥されており,名を問うても答えてはくれないが,旧軽岡峠の貴重な生き証人だ.


 杉に挟まれた舗装道をゆくと,高速道路の高架下に出る.先程の旧橋と似たような小さな橋を渡って,道路工事で切り取られたこの空間の端に至れば,そこから地道がスタートする.山側には丸い河原石を組んだ石垣があり,これは今後何度も目にすることになる.コンクリート護岸の幾何学模様よりも,こうした丸みを帯びた石垣のほうが,やはり山道には似つかわしい.
 あたりはすらっと伸びた山毛欅の森.右手の谷底には庄川の源流が流れている.進むにつれてだんだんと川音が遠ざかっていき,かといって全く離れてしまわないため,見えない川の存在をなんとなく感じながらの登りとなる.







 小さなヘアピンが現れる.上の段のカーブには草にまみれた枝林道.報告者は一昨年,この枝林道からまろび出てきた.上のほうに─道と間違えた─崖崩れ防止用のコンクリートブロック壁も見えている.
 ヘアピンから進むこと5分ほど,山側に一際大きな石垣が城壁のようにそびえる.この裏手から,真の軽岡峠道が始まる.


 その城壁の裏側.道は見えている.しかしその道は,林道の路面とはつながっていない.2mほどの段差となって,崖の上から始まっている.当然ながらその道は草棒棒であることが一目瞭然だ.ひょろひょろと斜めに伸びる若木も茂っている.

 AM9:40,調査開始.



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