旧馬神隧道(隧道北口〜内部)


 

 

 改めて自転車を持ってくる.煉瓦巻きとは聞いていたが,まさか「巻き」だけが煉瓦とは.素掘りの隧道の内側を3重の煉瓦で巻いていて,その末端が突き出している.それほど違和感が感じられないのは,ポータルに相当する岩崖がきれいな垂直面を形成しなおかつ岩脈が並行線となって,天然のパラペットを成しているからだろう.いわば地質の妙である.

 

 

 

 それよりもアーチ部しか見えていない=それ以下が埋もれていることのほうが気になる.中を覗いてみると,さも当然というように水が溜っていた.反対側も同様に土が詰まっていて,アーチの上方が約1m開いているだけのようである.だが幸い,水面は思ったほど高くはない.

 

 

 

 アーチ部の煉瓦は大変端正なもので,目地の仕上げもすき間なくぴっちりと仕上げてある.この丁寧さは同時期の煉瓦隧道中随一と言っていい.鐘ヶ坂隧道東口の仕上げも綺麗だったが,煉瓦の状態も含めてこちらが上だ.煉瓦アーチの基部(側壁)はコンクリートになっていて,欠けたところを見る限り,吹き付けなどではなく純粋にコンクリート製らしかった.となると後世の補修ではあり得ないから,「現存最古のコンクリート側壁(をもつ隧道)」と言えるかも知れない.
 

 一旦外に出る.ポータルの左手,煉瓦のすぐ裏側に大きな穴が開いている.その下にはコンクリート塊.どうやら以前は岩盤の続きがあって塞がっていたようだ.中を覗くと煉瓦巻の裏側が見える.内側に比べて乱れた並びになっているが,それは仕方のないことだろう.また煉瓦同士だけでなく,煉瓦の外側にも目地剤のコンクリートが塗られているのが確認できた.予想外の展開である.

 それでは,向こう側へ.自転車の荷物をばらして″プール″を渡る.


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