(2008追記:「補造化」は「造化を補う」と訓み、造化(天地創造の神)の創造物たる山河に人手を加えてより良きものにさせてもらった、という意味である。天然への畏敬と人間賛歌とが微妙なラインでせめぎあう面白い言葉だと思う。「其功以裕」はいま一つはっきりしない一文だが、セオリーどおりに読めば「其功裕を以てす」となり裕福だからこそできたと読めてしまう。むしろ徳の成すところなり,のように汲むべきなのかも知れぬ) さて,こちら側も,いかにも旧道然とした道はない.隧道改修記念の碑と偏額の間から私設林道が伸びており,これに沿って歩いてみるが,それらしき道を見出すことができず.そう遠くを巻いているようにも思えないが,念のため,10mほど斜面を直登してみる.やはり道はない.対岸はコンクリート護岸+金網で,意味ありげな階段などあったりもするが,その上は草まみれであって通行困難だ.
ひとまず改修記念碑に戻って考えてみる.ここからは旧道倶樂部としての直感が頼りとなるが,その勘を支える推論は正しくなければならぬ.西側から見た場合,旧隧道は現隧道のやや北側,標高差は20〜30m.そして何より重要なのは,穿たれた方向がほぼ同じか,やや北側に向いていることである.従って,こちら側も現隧道があるのと同じ谷か,旧隧道が北に向いているならばもう一つ北の谷に出ている可能性がある.後者はすでに調査済みで,もしあったとしてもそこへ通じる道が残っているはずであり,そしてそれはなかった.ということは,やはり現隧道のあるこの谷の上部が怪しい. 踏み分け道に分け入っていくと,すぐに竹林となる.足もとはもともと道でなかった.ただ竹林のなかにわずかに空いた空間でしかない.しかもその斜面には,現国道わきの護岸金網をつなぐ太いワイヤーが張り巡らされて通行を邪魔する.しかしながら,旧道の匂いがするのだ.この先に旧隧道があるはず,と,ナタを握る右手に力が入る. 竹林の光る地面がふと水平になった.青竹枯竹の群を透かして大きな空隙が見える.そしてその向こうに,緑色の壁が見えた. ![]() ! |
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