家棟隧道
[ORJ#13 喪われた道の物語 滋賀県]

■概略 Abstract
大正6年に完成した天井川隧道@滋賀県.村田の在滋中に作られたものではないため,訪問を後回しにしていたのだが…….ふと思い立って向かったその日が隧道最後の日であったという奇遇.翌日から解体が始まり,写真のような姿を経て消滅した.
村田と全く関係がないわけでもなかった.横山,佐和山の2隧道を建設するために招かれた遠山貞吉が初めて手掛けたのがこの隧道であったらしい.彼の先輩の(村田来滋のきっかけとなった人物の)first workなのである.
隧道はこの年秋の陸軍大演習に合わせて急造された.大正天皇の行幸ルートに当たったからである.それを理由に過度に改修することは禁じられていた.隧道の記録が全く残っていないのは,その制を犯したことを隠蔽するためであったかも知れない.
石材はとある所に保管されている.ただしその後再建の動きがあったとは聞かない.
(日本の廃道第13号掲載)