国道8号旧道

■背景 Background

 福井に住む人々に対して甚だ失礼な物言いになるかも知れぬが,福井県ほど面白い形をした県はない、と報告者は思う.複雑に折れながら伸びる細長い嶺南地方と,平野部の広がる四角い嶺北地方がごくわずかな幅でつながっていて,異様に頭でっかちだ.嶺北・嶺南をつなぐ国道8号は、その頚動脈といえなくもない.

 本報告書で報告したいのは,───先の比喩を引っ張るならば───そんな頚動脈にできた動脈瘤たる旧道群である.福井県敦賀市から武生市にかけての地形的制約が最も厳しい区間は,その厳しさ故に道普請が繰り返されて来た.特に明治18年から20年頃にかけて開鑿された「春日野道(敦賀道)」にまつわる遺構には、全国的に見ても価値ある隧道が3つも残っている.

 本報告書では沿線の旧道群を便宜的に国道8号旧道と総称することにするが,それらの建設年代は明治前期から昭和にかけて広範囲に渡っており,道として機能していた頃の呼称で見ても春日野新道,東浦道、春日野道(敦賀道),国道52号12号8号とさまざまに変化している.一口に「国道8号旧道」と呼ぶことは相応しくないかも知れぬが,ともかく今日の8号の基礎となったという意味で国道8号旧道と呼ぶことにする.また本報告書では,敦賀から武生に向かって一通り現状報告をした後に,改めて旧道史を振り返ってみたい.個々の遺構についての考察も最後にまとめて行なうことにする.


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