国道8号旧道(杉津〜大谷間)

■調査 Experiment

 黒崎からのゆるやかな下りを下れば阿曽.現国道の喧騒から逃げ出して,集落内を通る道─これが恐らく旧国道─を辿る.再び国道と合流し,左手に海を見下ろしながらひと登りすれば,崎を回って杉津の浜が見えてくる.旧国道はこの先しばらく現道と決別し,ほっと一息つける区間に入る.

 

 

 

 

 

 集落の中を抜けていく道は,升形よろしくクランク状の屈曲が多い.道の脇には地蔵様や石碑,忠魂碑の類も多く目につく.浜の北端・大比田には観音堂と大きなタブノキもあって大いに旅情がそそられる.国道以前の古い道も,恐らくここを通っていたのであろう.

 

 

 

 大比田から先の旧道は,現在は県道204号となって国道の一段下を通って行く.大比田〜元比田間,元比田の先でと2段に登って,そこから先はほぼフラット.崖崩れのため車両通行止になっていたりして,これ以上のお膳立てはない.報告車は雲一つないシアンブルーの空と紺碧の海を一人占めして登った.崖の上からかなたを見渡せば,後でその前を通ることになる河野の道の駅が小さく見えている.足元には有料道路.岬に穿たれたトンネルと行き交う乗用車が玩具のようだ.

 

 

 

 

 

   崖崩れ通行止とはあったが,2004年11月時点ですでに撤去済み.海とつかず離れずで走って,大きく離れたと思ったら国道のガードレールが眼前に見えている.苔蒸した石垣に導かれつつ国道へ.その石垣の上には墓石が並んでいて,下へ向かうもう一本の道にも,カーブの段ごとに墓標が立っている.この切り立った崖の下に大谷集落があるのだ.人はいかなる所にも住まるもの,にしても墓だけは絶対に流されないようなこんな高みにあることに,「親不孝な雨蛙」の昔話を思い出さずにはいられなかった.


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