|行政:北海道黒松内町〜長万部町標高:200m
1/25000地形図:静狩(室蘭9号-1)調査:1999年8月



 自転車で長万部方面から洞爺湖へ行くことを考えてみよう。交通量の多さを厭わなければ、国道230号をたどって虻田まで抜け、そこから北上する道がいちばん解りやすい。しかし、その道を実際に辿ってみると、静狩まで来たときに「ええっ!?」と思ってしまうに違いない。そこまでの平坦な海岸線が一挙に破れ、荒々しい磯崖とそれに続く巨大な山塊が、突如として目の前に現れるからである。

 静狩峠、礼文華峠はそんな山塊を越える峠である。江戸時代に初めて道がつけられるまでは、沖を行く船が頼りの交通の要害であった。日本海側の「雷電山道」(雷電峠)、襟裳岬の付近にあった「猿留山道」(猿留峠)と並び、「礼文華山道」として「蝦夷三嶮」の一つに数えられていたほどである。当然のことながら、現在は舗装道路に3つのトンネルで楽に越すことができ、当時の困難を知る術はない。

 もちろん、普通に越えたならば、の話であるが。

 トンネルの上に残る静狩峠の西側入り口は「静狩金山砕石場」という採石場になっている(国道との分岐に看板あり)。そこまでの道はよく踏み締められていて旧道らしくはないかわり、自転車で行こうものなら砂利運搬トラックの運ちゃんに「おーい兄ちゃどこいくの〜 行き止まりだぞ〜」と止められること請け合いである。ここはおとなしく東側からアプローチすることをお勧めする。東側の分岐は静狩トンネルを抜けて次の地道を右折(左写真参照:看板の手前が峠道)。ノーマルな砂利道がしばらく続き、10分ほどで三叉路に至る。あっけないが、正面の草繁き道が峠である。


 峠はちょっとした切り通しになっている。看板の類いは全くない。峠から西側、見えている範囲ではごく普通の道が見えており、あたかもそのまま乗って下れそうな感じさえする。


 が、真の静狩峠はここからが本番である。実は報告者、先に西側から登ろうとしていたのだが、砕石場の管理人さんに許可を貰いにいった際に「数年前にバイクが通ろうして行けなかった(ぐらいだから自転車なんて無理)」と言われていたのだ。その言や違わず。採石場のすぐ東隣の谷で崩落が起こっており、そこへ近付くにつれて道は一気に廃道化していく。夏草茂る(だけの)道から、木やら蕗やら虎杖やらが切り放題の道へと。


 幸いなことに土砂崩落の程度は小さく、全く道を見失うということはない。最終的に採石場奥の給油施設脇から出ることができる。ただし、平日に抜けてここへ来ると管理人さん他を驚かすことになるだろう。訪れる際はその辺りを留意して頂きたい。


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