第 
 二
行政:和歌山県和歌山市標高:30m
|1/25000地形図:和歌山(和歌山15号‐2)調査:2005年10月

■調査 Experiment

 続いて第二隧道へ.海側は旅館の建物が屏風を成していて,反対側はそそり立つ山.狭い空間越しに和歌浦の青い空が覗いている.そう悪くはない光景だ.さらに進んで断崖道を伝っていくと,いったん視界が開けて,再びホテルの屏風.その先,ホテル「萬波」に向かって大きく登る個所がある.新和歌第二隧道はその下を潜っていたらしい.

 一見すると旅館の敷地内のように見えるが,遊歩道の一部として使われているようだ.そんな案内板が入口に掲げてある.下って行けば小さな広場があって,その先に,やはりコンクリート漬けになった第二隧道.

 第一隧道の南側とほとんど同じ状況だ.ただし雁木の位置より上がなく,これは元々なかったのか,それとも破損してしまったのかよく解からない.後で上に登ってみたが,雁木の上辺は第一隧道東側と同じようなモルタル塗であったものの,これが当時からそうなのか,破損によってモルタルのみ残っているのかは判然としない.

 坑道は煉瓦巻アーチ.それ自体は珍しいものではないが,破損も少なく綺麗に残っているところに価値があるかも知れない.幅員も広くてこのまま現役として利用できそうなほどである.人が歩くための隧道として利用するだけでは惜しいような気もする.

 反対側.こちらも少し毀れ気味だが幾分かは当時の姿を留めている.雁木から上がなく,左側はスパンドレルすら落ちている.こちらは上に登る手段がなくて,どのような状況なのか確かめようがない.ただ残っている部分から察するに,第一隧道北側ほどの装飾は元々なかったようである.

 

 

 

 隧道それ自体は見所を失っているが,隧道口から見る眺めはなかなかである.出口で急角度に折れており,松の梢を透かして碧い海が広がっている.道端まで行けば白い帆のヨットが気持ち良さそうに浮かんでいる姿も見える.完成当初は左手の2階屋もなかっただろうから,さぞかし絶景であったろう.

 

 

 

 最後に重要な証人.第二隧道の東側の広場に緑泥岩の大きな石碑がある.新和歌の土地を今のような観光地に仕立て上げた張本人,森田庄兵衛を讃える石碑である.新和歌第一,第二隧道を作らせたのも,この人物だ.


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