行政:兵庫県猪名川町栃原 標高:160m
1/25000地形図:木津(京都及大阪11号-3) 調査:2005年2月


■背景 Background

 例えて言うならば,小学校の通学路の途中に有名人が住んでいたことを,大人になってから教えられたような歯痒さであった.
 

 兵庫県猪名川町を南北に貫く県道12号.ここに「あかまんぷ」と呼ばれた煉瓦造りの隧道があった.正式な名を杤原隧道という.報告者は,猪名川町教育委員会が2001年に発行した「まんがで見る猪名川町の歴史」で初めてそれを知った.当時の写真2枚も載せられている.


上:工事中(明治42年12月)
下:完成直後(明治42年12月)

「今、町の中央を縦断する県道は古くから摂津と丹波を結ぶ道として利用されてきたんだけれど今でもカーブが多いよね。昔はもっと細く曲がりくねっていたんだよ。
とりわけ杤原と林田には険しい峠があってみんな通行するのに大変だったんだ。
それでトンネルをつくろうということになったんだ。

(中略)

もう一つは「あかまんぷ」と呼ばれていたトンネルだけど今はもうないよ。杤原にあって、県道のすぐそばに改修を記念した碑が建っているけど、その改修工事は明治四十二年(一九〇九)に行われている。
いつの時代でもたくさんの人の力によってより良い生活を実現してきたんだね。」

(出典:猪名川町教育委員会「まんがで見る猪名川の歴史」・P73 強調は報告者による)

 この写真はもちろん,「今はもうないよ」という一言に,報告者はぐっと来た.「ない」というのは,取り壊してしまったということか.はたまた別の状況下にあるのか.
 猪名川町の教育委員会にお尋ねした.結果,それは「埋められているらしい」とのこと,その場所を記した地図も送って下さった.担当の方も半信半疑だったが報告者はそれ以上だ.◎がつけられた場所は,新歓ランで,ポタリングで,何度も通ったことのある場所だったからである.

 埋もれているらしい明治の煉瓦隧道・あかまんぷ.その「らしい」をらしいにするために,報告者は杤原へ向かった.


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