津坂隧道(石組み暗渠・旧峠)


 旧県道の遺構はこれだけで終らない.林田側へ下ること約100m,左手から中程度の谷が入ってくる.道はその上をこともなげに渡っている.春日野道での経験から,もしやと思って谷底に下った報告者は,ここでも暗渠を発見した.しかも,巨大な石製の暗渠である.

 入口はゴミや倒木で半分ほど塞がれているが,逆台形の石組みの上に石梁が渡されているのが見てとれる.梁の長さは160cm前後,厚さは30cmといったところで,その上にさらに石垣が野積みされている.  内部に入ってその高さに驚かされた.3m近くはある.縦に細長い通路のような構造は,規模は全然違うがギザのピラミッドの大回廊を彷彿とさせた.

 梁石はいかにも硬そうな花崗岩質の岩(硬砂岩かと思われる)で,幅は45cm〜50cm強.これをいくつも渡して20mほどのトンネルを形成している.側壁はわずかに青みを帯びた礫石.樋の底にも礫石の岩盤が見えているので,この付近で取れた山石を使っているようだ.この側壁の材質と仕上げは津坂隧道の石組みに似ている.そうして隧道と同様の目の粗いコンクリートが用いられていたようである.



 ちなみに,隧道以前の峠道もやはりこの峰を越えており,峠道と切通しとが現存している.ただし林田側は一部消滅しているので,行ってみようという方は木津側からのアプローチをおすすめする.隧道から数えて2つ目のカーブの先端から,右手斜面にとりついて登っていくのが旧峠道.急勾配でぐいぐい登っていき,2〜3分ほどで峠に至る.人一人分程度の幅しかない,鋭く切れ込んだ峠である.林田側は隧道周辺の護岸の金網が峠道まで覆ってしまっていて,このせいで道が失われてしまっている(金網を無理矢理辿れば降りられないこともない).わずか100mほどの隧道ではあるが,この旧峠の険しさを体験すればその有難味が解るというものだ.


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