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白瀬峠 (しらせとうげ)

【標高】1010m
【行政】滋賀県神崎郡永源寺町〜三重県員弁郡藤原町
【経緯度】北緯:35°10′35″/東経:136°26′08″
【水系】淀川水系茶屋川〜員弁川水系員弁川(坂本谷)
【二万五千図】篠立:NI-53-8-9-2 名古屋9号-2
【五万図】彦根東部:NI-53-8-9 名古屋9号 \ S56修
【ツーリングマップル】関西 P33 2-B

 治田峠が生活道として利用されていた一方で、あまり重要視されていなかったらしいこの峠。山と高原の地図では「白船峠」とあるがその根拠は何なのだろう。

■編集者のコメント

 最初は茨川方面から沢を溯上して登ろうと計画。神社に立ち寄って無事帰ってこれるよう祈願して出発する。川がくるりと360度曲がっている地点まではこぶし大の小石が敷き詰まった浅い河原であり、スリッパ程度の軽装でも楽に進むことができる。上記のヘアピンを過ぎると(ここに→茨川の看板あり)大岩が転がりはじめ、瀬の泡立ちも見られるようになるが、淵というほどの深みはなくどこまでも浅いままの川で奥まで。所々川岸に上がるところがあるが、ここには決まって炭焼き窯の跡がある。川の石が格段に大きくなる頃、やや唐突に三筋の滝が現れる。高さ15mほどの巨大な壁だ。水量の関係で右端の大きなものだけしか滝になっていないが、水量が多ければ確かに三筋になるはず。とは言えそれだけの水量になる頃にはここまで来ることができない罠。
 で、道は地形図通り滝の左手を行くが、70度近い傾斜のロープ垂直登坂である。ここで登山靴に履き替えて、本格的な山歩きモードに。このロープもさることながら登りきったあとの水平移動がつらい。足場や手掛かりがほとんどなく、ちょっと滑らせればたちまち命が1つ減るだろう。この先にあった割滝のへつりとともに寿命の縮んだ担ぎとして忘れられない区間だ。
 滝の上部はさらに岩が大きくなって、困難さはその度合いを高めていく。君ヶ畑への分岐、さざれ岩×3が沢を塞ぐ地点、谷一杯の大きな岩が2つに割れ、その奥に滝を抱え込んでいる割滝(勝手に命名)と、登れば登るほど困難になっていく沢。出発してから4時間後、ついにあきらめて帰ることにする。
 数日後、今度は反対側の坂本谷経由700up担ぎ上げコースで再挑戦。天候は曇り。ちょいと突つけばそれをきっかけにどしゃ降りになりそうな、そんな不吉な雲であった。藤原岳、御池岳の山頂近くは霧の中で全容を見ることができないが、見えている裾のあたりを見ただけでもえらい勾配と高さであることがわかる。集落手前でがくっと落ち込む地形は、何となく猫の手を連想してしまう。坂本、山口という地名が懐かしく思われたがどうもこれは巡検街道に対しての地名であるらしい。
 藤原岳登山道のある坂本谷出口は大きな砂防ダムを建設中。砂防ダムは2段になった念入りなもので、上部は新築らしく、その下のものは古いものを補強する形で作っている。道は完全に途切れているかと思いきやちゃっかり迂回路がつけられていて、ダムの向かって左手の斜面をちと強引に登って越え、第一第二のダムの間に下りることができる。第二のダムはその右肩にちゃんとした階段で登り口あり。これを登った先からが、本格的な登山道となる。
 始めは沢の脇にある林を伝って登る。この時点ですでに「ホントに登山道ナノ?」と思うような木の根踏み分け道だが、沢に下りてから更に大変になる。下から見上げた時そのままの傾斜の谷は、一抱えも二抱えもあるような岩がゴロゴロする谷。石灰岩の白が果てしなく上へ続いている。そんな谷を形作る大きな岩には赤ペンキで○印。ココヲユケという、親切心なのか強制命令なのかわからないようなマークがぽつんぽつんとついている。・・・自転車で来るんじゃなかったよ・・・。
 水がないのが幸いだが、先日のどしゃ降りの影響と思われる泥だまりがあちこちに出来ていた。これも曲者だ。何も考えずに踏んでしまうと靴裏の目に詰まってしまい、雪だるま式に重くなってしまうのに加えて、岩を滑りやすい凶器に変えてしまう。そしてこの湿度。汗が吹き出てまさに水をかぶったようになってしまう。かなりの極限状態。
 やがて谷が広くなり、土石流検知センサーと思われるワイヤーの張られた箇所を過ぎる。自転車が引っかかりそうになり少々慌てる。その上部がいわゆる出合で、泥流は主に左の谷から来ている模様。ありがたいことに○印は右の谷へと続いている。勾配のきつさは相変わらずだが、この先は時折り左右の森の中へ入っていく箇所が現れはじめる。沢道以外の道があることが最初は嬉しかったんだが、森の中にはヤマヒルが多数生息していることを知って悲鳴をあげる。かといって沢に下りれば、レゴブロックを組み上げたような細かな岩の組み合わせでできた滝(まともな足場がなく当然滑る)、つるつる滑るなめらかな岩の滝、時には上流から流されてきて引っかかっている木など、そんなものばっかりなのである。八方ふさがりじゃん・・・。
 ひたすら我慢して登っているうち、谷の焦点がやや青く見え始める。20分ほどでまた出合。沢の本流は左へ続くが、道は沢から離れて右手へ。ようやく勾配が緩くなり、「押していける」ようになる。が、すでに押す力も無くなっている。右手の斜面を軽くつづら折れてピークへ。針葉樹の森に濃いもやがかかっていた。ここから直接藤原岳へ行くことも、山口のバス停へ下ることもできるそうだ。峠への道はちょっとだけ下った後、トラバース気味に山腹を登る。乗れそうで乗れない傾斜と脆い斜面。記憶によれば最後にまた直登があるはずだったのだが、道はトラバース気味のままぐんぐん登っていき、林が薄くなったと思ったらそこが峠であった。黒と黄色のビニールロープをくぐれば、ちょっとした広場になっている峠。振り向けばこんな看板が。「坂本谷で土石流が発生しています。危険ですので通行しないでください。藤原町」。もう通行したちゅうに、とどこかで呟いたことのある台詞が口を突いて出てくる。
 峠には白船峠という看板ともう一つ看板。「山ヒルには靴に塩を入れておくと極めて有効」なのだそうである。できることならばこの峠の麓にこれと同じものを作っておいてほしかった。この山中でどうやって塩を入手せよというのか。そんな大量の塩をふだんから持ち歩いているハイカーは(多分)いない。
 さて、次は茨川への下りだ。本来の道は峠西の谷(真の谷)を下るものであったそうだが、この他にも少し北側へ寄り道して尾根筋を下る道もある。おっちゃんによれば尾根筋道のほうがしっかりしていて歩きやすいとのこと。私は地図を持っていなかったこともあり、ここから真の谷を下っていくことにする。この谷もなかなか面白いところで、大きく開けた谷には間隔をあけて木が生えており、たいへん見通しがよい。その中央部に道らしきスペースがあるが、実はこれは道ではなく、歴とした沢である。その上に厚さ数十cmの枯れ葉が積もっていて道に見えるだけなのだ。とはいえこの沢とも道とも言えないような部分を辿って行っても特に差し障りはなく、またこの他に目印となるものもない。時折深く踏み抜けることがあるのに注意しさえすれば大丈夫。
 茨川に下りついた地点から谷を見上げる。見上げた谷はさほど大きくなく、他の枝谷と区別がつかないように思う。茨川の左岸の木に「→白船峠」の看板があったものの、これも木の裏に隠れているので、下から来たときに見つかるかどうか。ともかくも不明瞭な分岐である。あとはさんざん苦しんだ2つの滝、長い長い回廊のごとき沢を経て茨川集落へ。(2002.6.:ながとみ)

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■関連リンク

・国土地理院地形図閲覧システム:白瀬峠      
・国土地理院『うぉっ地図』:白瀬峠
・国土交通省空中写真:CKK-75-10-C17A-10, 11, 12 / CCB-82-5-C16-12, 13 / CKK-75-10-C16-10, 11, 12, 13 / CKK-75-10-C17B-1, 2, 3


 坂本谷1
 ふもとから見た坂本谷。山腹より上は霧の中・・・。(な)

 坂本谷2
 坂本谷はほとんど全てが石灰岩で構成されている。この岩がゴロゴロした谷底を行かなければならない。(な)

坂本谷2
 谷底を離れ、山口からの登山道と合流するピークを越えた先はこんな感じ。(な)

白瀬峠
 白瀬峠を見上げる。(な)

白瀬峠
 峠から西へ向かう地形図点線道(真の谷)。峠付近は緩やかなナルを形成しているが、すぐに深く切れ込んだ谷になる。(な)

白瀬峠・茨川側
 真の谷と茨川出合。右手に真の谷。正面の沢を塞ぐようにして生えているカエデが目印になるかな?(分岐の看板は右手の木の裏にあって発見しにくい)。以降の写真は茨川集落に至るまでの順。(な)

白瀬峠・炭焼窯
 少しでも平らなスペースがある所には決って炭焼窯の跡がある。写真のように川に張り出した土手の上にもそれがあって、執念のようなものを感じずにはおれない。(な)

白瀬峠・割滝
 谷を塞ぐような大岩が割れ、その奥から水が落ち込んでくる滝(下流側から撮影)。この割れた間を抜けることは困難なので、写真左手の急斜面をへつらなければならない。(な)

白瀬峠・さざれ石三連星
 茨川上流にはさざれ石の大岩が多く存在。苔蒸した姿はまさに君が世の世界。(な)

白瀬峠・君が畑分岐
 この川から君が畑への道もあるらしく、分岐となる沢の出合には看板がある(上流側から撮影)。(な)

白瀬峠・石灰岩の崩れ込み
 三筋の滝を上がってすぐの地点。藤原岳の方向から石灰岩が大きく崩れ込んでいる。ここから稜線に出ることもできるらしい。(な)

白瀬峠・三筋の滝
 三筋の滝のうちいちばん水量の多い部分。深くえぐれた滝壷が面白い。(な)

白瀬峠・茨川
 集落に近づくにつれ、川は歩きやすい渓流へと変わっていく。写真は茨川集落の神社前から上流方向を見上げて。(な)

白瀬峠・茨川の神社
 鳥居だけが真新しい茨川の神社。神殿や石段、狛犬はすべて苔に覆われている。(な)


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