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大在峠(仮称)


 N氏と二人連れである。住宅地を下に見下ろしつつ、崖に沿ったゆるやかな登りを登っている。あまりに緩やかなので登っている感じがしない。ともかく、買い出しのことを考えながら登っている。

 視界が開けると海。ここで初めて海のすぐそばであることを知る。ややあって峠。自分はこの峠の向こうにあるコープ大在で買い出しすることばかり考えていたので、展望台へ向かったN氏に気づくのに遅れて行きすぎてしまう。標高は低いが海のそばだ。たしかに眺めはいいだろう。遅れてN氏の後を追う。

展望台は、展望台というよりもむしろ峠のドライブインの海側を取り壊したような感じのもの。道から見れば建物に見えるが、一種の張りぼてだ。かといって実際に取り壊して作ったかといえばそうでもないらしく、ベンチや何やらが小綺麗に設えてある。

そうして海の展望はといえば、やはり何とも言えぬ素晴らしい眺めであった。快晴の空に負けないくらいにvividな青色の海。当然と言えば当然だが、視界の中でその青がひときわ目立っている。沖のほうには防波堤。その青に続いて白い波打ち際、砂浜が帯をなし、少しくすんだ灰色の住宅地につながっている。そのすぐ向こうは岬、そして岬に続く低くなだらかな山の尾根。それ以上を眺めることはできないが、だからこそその向こうが知りたくなるというものだ。海の眺めも案外捨てたもんじゃないな。

N氏はさっそくカメラを取り出して写真を撮り始めた。自分もつられて6900zを取り出す。この青、ちゃんと再現できるかな。そう思ってのぞき込むファインダーの向こうには、波打ち際で波と戯れる水鳥の姿。


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