キ 
 リ
ズ 
 シ
 行政:大分県中津市〜宇佐市標高:190m
ト 
 ン
ネ 
 ル
|1/25000地形図:宇佐(中津11号‐4)調査:2005年5月


■背景 Background

 報告者の部屋の資料棚の一隅に「大分県の近代化遺産調査報告書」がある.生まれた県の調査報告書であることもあって無理して手に入れた一冊だ.隧道王国・大分県のそれだからさぞかしウハウハな内容であろうと思われるかも知らぬが,さにあらず.本編に掲載されているのは畑野浦隧道ただ一つしかない.実際,ちょっとだけがっかりした.
 しかし,附属する別冊「近代化遺産リスト」には数多くの隧道が載っていた.このリストは一次調査で集められた近代化遺産候補の一覧で,いわばかけられた篩の目からこぼれ落ちてしまった連中だ.そんな中でも特に目を引かれたのが,ここで報告する「キリズシのトンネル(俗称)」であった.

 先ず以て,名前がいい.キリズシという不可思議な語感はもちろん,漢字が充てられていないという所がいい.地元に古くからあって,日頃の言葉で呼びなまされ,もはや漢字を充てることすら不可能になっていることを示している.わざわざ(俗称)とつけられているのも,その辺りに理由がありそうだ.

 そして驚くべき事実.リストには所在地と簡単なコメント,保存状況・活用状況,竣工年が記されているのだが,それによれば竣工は,何と明治3年なのである.

 キリズシのトンネル(俗称)とは何者ぞ.キリズシ・キリズシ・キリズシ…と呪文のように繰り返しつぶやいているうちに,無性に行きたくなった.そして,行って来た.九人ヶ塔隧道のおまけ気分で向かった割には,素晴らしいお土産付きであったりする.


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