旧鰈川隧道

ORJ#37 TRDB 和歌山県]



■概略 Abstract

「和歌山県の近代化遺産調査報告書」では明治18年竣工とされており,その通りであれば現役最古の煉瓦隧道ということになるが,疑義を挟む余地がある.確かにこの頃熊野街道が換線され鰈川坂を経由するようになったが,その誘致に多大な尽力をした田中善右衛門の伝記「安諦立志鑑」には隧道の話題は出て来ない(同じ時に有田川に架設された安諦橋については詳細な物語が記されているが)し,幅員4.8mは当時の和歌山県道熊野街道にとってはオーバースペック過ぎる.同じ路線に明治22年に作られた由良洞でも3.3mである.また使用されている煉瓦も230mm×100mm×60mmというメートル法に乗っ取ったサイズで明治中期に焼かれたものとは考えにくい.由良洞の厚54mm以下の煉瓦や県下に明治19年に作られた池田隧道の煉瓦ともテイストが異なるよく焼けた煉瓦である.

(日本の廃道第37号掲載)


毛見隧道 | 大上橋

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