旧長野隧道(大山田村側-2)

 砂防ダムの奥に何かが見える.石組みである.まさか,と思いながらぬかるみを踏んで行けば,確かにそれは石組の隧道ポータルでありアーチの頂部と帯石だった.しかもそれらは目の高さだ.


 アーチの要石より上だけが露出している.苔蒸している部分も多いが,白い基質の岩でアーチ環が作られていることが見て取れる.きらきら輝く大きな白い結晶を多く含んでおり石英安山岩のようだ.要石の下にはわずかに開いた空間.奥はすぐの所で塞がっているようにも見えるし,美里村側までつながっているようにも見える.ヘッドランプがないために,これ以上何もすることができない.

 トンネルの左手には乱れ積みの石垣と,そこにつけられた樋.樋もまた石組みであって,きれいに磨かれ整えられた曲面が何げに美しい.隧道の埋もれ具合から判断して,この樋もかなりの高さがあったと想像される.
 振り返れば,砂防ダム.このトンネルを「潰す」ために作られたかと思われる.そこまでしなくてもいいのに,とも思うが,このトンネルあるいはトンネルのある谷からの漏水がよほど酷かったのであろう.旧隧道と新道が異なる谷に造られることが多いのもあるいはそういう理由からかも知れない.

 

 

 

 

 こんな状態であるので,大山田村側からの調査はここで終了.現長野隧道を抜けて,反対側に向かう.


旧長野隧道・美里村側長野峠旧道史

 

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