正直に言う.目の前にあるものに怖気づいた.確かにそれは目指す佐和山隧道だ.だが実際問題として,それは廃虚としか見えない.これほど廃虚という言葉が相応しい廃虚もない.上から横から枯れた竹が覆い被さってきてはっきりと姿を見せず,それがまた不気味さを増幅させる.ポータルの煉瓦も石組みも苔に覆われ変色し尽くしている.そして何より,そのポータルは上半分しか露出していない.
動ける範囲で調査.まずポータルは横山隧道,賤ヶ嶽隧道と同じ構造のイギリス積み煉瓦+石アーチである.左側には煉瓦製の樋も見えている(右側は土砂に埋もれていて不明).空いている空間(地面からアーチの要石までの高さ)は約3mであり,隧道内には実に4m以上の深さの水が溜っていることになる.アーチ形状や迫石の形等々はスペックが似ている横山隧道とほとんど同一だ.横山隧道が今でも健在なのを思うと,哀しく憐れに思えてくる.
隧道内部の右手にも土砂が流れ込んでいて,これに沿って10mほど中に入ることができる.しかし例によって水蒸気が立ち込めており,そこから奥は全く何も見えず.ヘッドランプも役に立たない.ポータル裏側にはアーチを一周する亀裂.そして,フラッシュで撮った写真により解ったことだが.向かって左手の壁面にも水平方向の大クラックが入っている.これほど大きな亀裂が水平に入っているのは初めて見るものだ. 時間がないこともあって,調査はこれで打ち切り.もっと道具を揃えてこなければ,これ以上は調べられない. |
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