隧道の構造についてのメモ.主に「見方土木」より.
隧道ポータルの構造の名称を図1に示す.
図1.隧道ポータルの構造
以上の坑口の構造を総称してポータルと呼ぶ.ポータルサイトのポータルと同じ意味.また笠石+帯石+ピラスターの基本構造は「冠木門(かぶきもん)型」とも呼ばれる.特にピラスターが笠石を貫通しない図のようなポータルは「鳥居型」と呼ばれることもある.
アーチ環の各部材の名称.
図2-1.典型的な石アーチの構造
典型的な石アーチの構造と部材名を図2-1に示す.コンクリートブロック積みの隧道も同じ.
図2-2.楯状迫石
石アーチの場合,五角形に加工された迫石が使われている場合もある.この迫石を特に楯状迫石という.同じ寸法の場合もある(主に装飾のため)が.図2-2に示すように垂直面水平面を出した異形状の楯状迫石は,壁面の部材と噛み合わせることでポータル強度を増す効果がある(はず).というよりも楯状迫石はみな垂直面水平面を持つものかも.この良い例は何と言っても旧長野隧道東口.
図2-3.煉瓦アーチ
図2-3は煉瓦で組まれたアーチの例.煉瓦の層は3重〜4重のものがほとんど.報告者が知る限りでは金辺隧道と花山洞のアーチが5重で最大,奥山田新道第三号隧道が2重で最小.煉瓦巻きの隧道の場合,内部は煉瓦巻きだがポータル部分のみ石アーチという例が多い.また,迫石に相当する部分が煉瓦で,要石だけが石製という例もある(現存最古の小刀根隧道,明治42年竣工の小野尻隧道などがその例).
図2-4.コンクリートアーチ
図2-4はやや近代的なコンクリート製トンネルの構造と各部名称を示す.スキューバックは上からの荷重と山肌からの荷重を受け,インバート(仰拱)に向けて流す(?).
アーチ環の形状とその呼び名.
図3-1.円アーチ(円弧アーチ)
アーチが半円を描く.真円に近いものから楕円形のものまでさまざま.
図3-2.欠円アーチ
アーチの長さが半円以下.大分県の小田無隧道くらいか?
図3-3.馬蹄形アーチ
アーチの下部がすぼまって,馬の蹄鉄に似た形になっているもの.基本は鉄道用隧道,その影響を受けて戦前の道路用隧道に多い.滋賀県の大正〜昭和にかけての旧隧道群はどれも馬蹄形で統一されている.
図3-4.放物線アーチ
アーチ形状が上向き凸の放物線状になったもの.道路用隧道では東京山公園の愛宕山隧道,旧国道8号・春日野道の金ヶ崎隧道,阿曽隧道,春日野隧道などに見られる.
図3-5.尖頭アーチ
ヨーロッパの城や中東の寺院に見られるような,頭の尖ったアーチ.日本では琵琶湖第二疎水の吐口くらいか?
煉瓦について.
図4-1.煉瓦の各部名称
煉瓦の最も大きな面は「平」と呼ばれる.残りの面の長い面が「長手」,狭いほうが「小口」.
図4-2.煉瓦の積み方
図4-2.げた歯構造
特徴的な煉瓦の積み方の一つに「げた歯構造(図4-2)」がある.アーチ端やポータル面に凹凸を残したもので,装飾的なねらいがあるだけでなく,後に増築する時に煉瓦をげた歯に噛み合わせることで一体化した構造を作ることができる.社団法人 日本鉄道建設業協会の頁に大変わかりやすい写真と解説あり.
図4-3.ねじりまんぽ
「ねじりまんぽ」は鉄道の橋梁などに見られる特異な煉瓦積み構造.すでにある道や川を斜めに横切らなければならない場合=トンネルと線路とが斜めに交わる場合に「ねじりまんぽ」が組まれた.一口に云えば,力のかかる線路方向に対してアーチが形成されるよう煉瓦を斜めに積んだもので,図4-3の模式図のように線路と垂直方向に列が並ぶ(実際はこれが三次元的に組まれる訳だがうまく描けなかった).このためトンネル内部から出口方向を見ると,煉瓦の列が渦を巻くようにしてねじれて見える.なお「まんぽ」というのは鉱山の坑道などトンネル構造を指す古い言葉,「まんぷ」「まぶ」とも呼ばれ,「間歩」などの漢字が充てられる.
石積みについて.
KDC.