nagajisの日不定記。
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飛行機の室内のような所にいる。客は少ない。というより空港に着いたので降機しなければならないようだ。2+4+2列になった広い座席の4+2の間の通路を、何やら大きな荷物を抱えて通る。居眠りしたままの乗客が独り。降りすごして元の空港に戻ってしまったりしないだろうかと心配する。
通路を抜けていくといつのまにか操縦席に出てしまう。コクピット、というよりも列車の運転席のようだ。電車みたいだ、と思った途端に眼前の窓の外は駅構内になってしまう。ここからは見えない機体の下から伸びる二条のレール。さてはこれ、新幹線だったか。
誰もいない運転席からは誰もいない駅構内が見える。目の前は操車場のような広い敷地。なぜか在来線のそれのような草々した広場だ。空が青い。視界の果てにはやわらかな低山の山波が見える。
ここでふと、新幹線を運転してみたくなる。どこをどう動かしたのかは覚えていないがともかく新幹線を勝手に操縦し始めてしまう。ゆっくりと、そして車のトップスピードほどまで速度が上がり、駅を離れてゆく新幹線。
止める方法など知る由もない。むしろ「行け行けどんどん」な高揚感でもってずんずん突き進んでいく。新幹線はやがて操車場の果てに至り、車止めもないその軌条の先の、赤錆びたレールへと突入する。青草に包まれ枕木も埋もれた線路はまるで廃線。しかもレールの幅が広すぎる。脱輪の感触。さすがにまずいと思った。脱輪してしまったら、バックで戻ることもできないじゃないか。そうしてその勢いのまま小橋を渡り、その向こうの荒涼とした広場まで突っ込んでいってしまう。
この辺りから罪悪感が襲ってくる。やばい。怒られるかも知れない。怒られるどころではない。逮捕だ。お縄だ。こっそり戻さなければならない。しかしどうやって引き返そう? そう思っているうち、(現実には絶対あり得ない取り回しだが)レールがうまくループしていて、引き返せることを発見した。こちらに入れば。
脱輪しガリガリとバラスを噛みながらも方向転換する新幹線。そうして全く逆向きになることに成功した。このまま進めば駅に戻れるだろう。しかし新幹線は脱輪している。先ほど渡った小橋の上の、土くれと雑草にまみれた軌条はすっかりボロボロだ。まるで片輪走行をしたかのように一筋の堀返しができている。しかも、さっき渡った小橋の向こうの土砂盛りの陰に、慌てふためく整備員たちの姿がちらりと見えた。やばい、新幹線がないことに気づかれている。小山のこちらの新幹線にはまだ気づいていないようだ。逃げろ。
何故か、反対方向へは逃げない。その小山を右手に回って、駆け回る整備員たちの傍らを縫って走り去ろうとする。犯人がわかっていない=顔を見られても不審に思われるはずがない、という思い込み。事実小走りに駆け抜ける整備員とすれ違うがこちらを見向きもしない。大丈夫だろう。しかしそう思う自分もまた駆け出している。その行為の怪しさにはまるっきり気づいていない。
やがて周囲は里山の遊歩道とでもいう態の薄暗い森になってしまう。土々した谷。川筋に沿う小道。薮の斜面につけられた捷路。そこを青い服青い帽子
の整備員たちが新幹線を探して駆け回っている。小路を外れ斜面を駆け上がって逃げる。階段状になった岩崖に取り付き、登っていけば、岩盤だと思っていたその崖が実は巨大な一枚岩だと気づいて感銘を受けたりもする。その傍らを整備員が駆け抜ける。
谷の高みを巻いていく小道はやがてぐるりと巡り始め、小山の向こうへ下っていこうとする。この場所から谷側を見ると水路の跡の如きもの。使われなくなって久しい廃水路のようだ。逃げなければならないという切迫と何だろうという好奇心から道を外れてその水路のほうへと降りて行く。
コンクリート製の水路は朽ちてスカスカだった。底に穴があって空が見えている。ひどく切り立った斜面のようだ。しかし恐怖を伴うような高度感はない。それは周囲を包む杉林の鬱々さのせいだ。じめじめしている。崖の上から宙に向け、朽ちかけているとも生きているとも取れるような木々が大水の直後の取水堰堤のごとくに絡まり合いながら伸びていて、その隙間からはるか下方の杉の森が見えている。こっちへ逃げよう。
宙に絡まる木の幹と木の枝とを八艘飛びして駈けてゆく。湿気た杉丸太の滑りやすさを思うが足元はマジカルフォレスターだ。むしろそれより捕まりたく無いという一心が、そしてこのままどこまで行けるだろうかという心持ちが追い立てる。気にしているひまなどない。だんだんと木の幹が細くなり、太い枝を踏むようになって、さらにその先の絡まった杉へと飛び移り。
ついにその先に飛び移るべき杉の枝が無くなった。かわりに奇妙な、全く逆向きになった杉の木が数本、足元のやや離れたところに「生えている」。ジャンプして3mほど飛び下りれば取り付けそうだ。
えいやっ、と飛びながら、ひょっとしてあれは朽ちた杉なのではないかと疑ってしまった。その通り、逆さ杉は朽ちていた。根ごと倒れた杉が杉の絡まりに引っ掛かっていただけなのだ。うまく飛びついたのはいいが、その重みで杉の絡まりから抜け落ち、その格好のまま、落ちていく。
「ああああー」と落ちていく感触はマンガのようなスローモーション。そのスローモーのせいで命の危険を感じない。相当な高さがあるに関わらず「助かるだろう」という確信めいたものさえある。そうしてその通り、フカフカの杉の葉の敷き詰まった地面にボトリと落ちる。杉の木の空位抵抗があったのと、着地のショックを垂直になった杉が吸収してくれたようだ。
とりあえず助かって、逃げおおせた。家に帰ってくる。実家にいる。誰もいない。しかしこのまま匿ってもらうわけにもいかない。遠くまで逃げて来たせいで余計に心が重い。指紋が残っていたりしないだろうか。いや自分の指紋なんて今まで採取されたことはないからわからないはずだ。荷物はどうしただろうか。持ち出したはずだよな。そのうち追っ手がこの山のなかまでやってくるかも知れない。家族に顔を合わせる前に天井裏へ逃げようか。そうして必要な時だけこっそり抜け出して。
そんな生活は、いやだ・・・。
・・と思ったところで目が覚める。心底ほっとする。いろいろ病んでいるのかも知れない。
変な夢って、目が覚めた直後に全部記録しておくと、<br>あとあとかなり笑えますよね。
見てる時にはホンキなのですけどね。何でこんな展開に疑問を持たないんだ、って思います。<br>訓練すれば夢だと意識して夢を見られるそうですが(明晰夢、でしたか)、そんな境地には到れないようです>nagajis