nagajisの日不定記。
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午前中は寝ね昼に至りて起き、食堂にて久方振りに食事したり。夕食し食堂にて食したれど、やはり、友と共に食したるが愉快に食す事出来体の為ると思いたり。今日は昨日疲れたるの意を以て、起床随意にして、いつまで寝ぬることを許可されたるを以て、皆の者、七時三十分過ぎまでも寝ねいたり。今日より一年生も各個に日曜及び随意運動等に剣術を為すことを許可せられたり。然し日曜の朝の剣術は、熊幼の誇となすべき処なる故に、必ずなすこと。昼に、一時間余雨降りぬ。家より封書来り、中に裕子の習字入りていたり。昨日より急に暖くなり、熊本も春かと疑わるゝ程なりき。朝にて、十度以上なりき。
今日の臨時ニュースにて、我軍は、マレー半島の先端のジョホール・バハールを昨三十一日十六時完全占領したと伝えらる。あと、眼前の島にある、シンガポールのみと思うと嬉し。新聞によると、紙上出でている数にても、飛行機の敵の損害昨日のみにて七十数機ありたり。
昨日に比較するに、それ以上むし暑く、朝に十七・八度ありたり。難波教官殿欠勤されたる故に、四学班合併にて、広瀬教官殿の下に、十八教室にてありたり。診断の為唱歌は受くること能わず。六時間目の剣術は見学す。七時間目は月齢身体検査なりたり。断食を数回なし、腹こわしたる故大部体重・胸囲減じたりと思いたるに、安外減らず体重〇・七瓩減りたるのみなりき。腹工合稍々良くなりたるも未だ悪し。劇動休となる。
朝十四度ありて、昼に至りて十度に下り、夜に至りて一層冷え三寒四温も過ぎいよヽ寒くなる前兆なることを思わしむ。体操は見学す。夕食に夕方振りに普通の飯を食す。よく噛み、約四十分かゝりたり。よく腹痛の原因を考うるに、定めてよく噛混まざる事にありと思い、以後は食する二人以上に、ゆるりと噛まんと決心したり。又酒保へも行くまいと此の度の腹痛を期して覚悟したり。夕食後訓育班切磋会あり。清涼なる湯に、久し振りにて入りたり。
思いの如く寒かりき。地理漢文の教官殿休まれし故に、三吉教官殿話並に、自習ありたり。午後は歩兵隊見学なりしが、予定を変更して目測及び手旗の通信ありて、校の付近にてなす。しかし予は診断の為参加せず。診断の結果治癒となりたり。随意運動時に裏門より走って出発し、一気に兜山に登らんとせしが、約八合程登りて脚疲れ来たり。下山後も足下振らつきたり。これ急に近日せぬ事をなしたる故と思う。腹工合非常によく、今日の食事は朝・昼・晩共食するに、四十分以上を要したり。此の際にくせをつけなば将来もゆっくり食すならん。
午後は術科づくめにて自習なし。五時間目は学科、六時間目は教練、七時間目は剣術、随意運動時は愛校作業なりき。朝と夕は寒く、昼特に教練時にては汗出でて止めあえず。昼食は誕生日会にて会長なりき。その際三吉教官殿の送別の挨拶あり。教官殿は一種の和歌を吟ぜられたり。腹工合は良し。噛み方時間の関係により三十分となる。佐賀市国民学校先生方見学に来られ本校に一泊せられ明日帰られる予定なり。
〔nagajis:天候ヌケ ここまでで初めて〕
漢文は習字に変更す。術科は体操なりき。運動班運動は運動場及び雄叫台に於て二年の方と剣術をなし。非常にきつかりき。十六時に、一訓附下士官殿花田正男軍曹殿の招介あり。殿は野線に、一年間働き居られし故顔は日焼けして、真の大和男子たる男子に見えたり。元気は驚くべきなり。今日の夕食は十八時半まで緩りと食したり。
〔nagajis:「招介」→紹介〕
午前中は予定通り。午後は訓話及び軍医袴・靴類全部の検査あり。随意運動時は手入整頓修理等をなし出ぬ事を許可せられたり。夕食は十八時十五分まで食したり。予思えらく、食物をよく噛みて食すれば量小なれども腹ふくるゝことを。故に早く噛みて多く食するは効なく。緩りと噛みて少量に食するは前者に比し、効大なる事を終結となして得。夕食後運動班切磋会ありて此の際三明さん曰く、剣術は意気強くして盛に行えと。さっそく明日なさんと思いぬ。
昨々〔一昨〕日即ち二月六日ジャワ島沖海戦行われ我が海軍航空隊は和蘭(蘭印)の主力を撃滅したり。即ち巡洋艦三隻を撃沈したり。
五時に起床し、五時十五分に剣道場に集合し、運動班の下に剣術行われ六時に至る。一・二年は三年に向いて教習試合なりき。休む暇なき故に、非常に疲をおぼえたり。八時に、雄建神社に集合し、大詔奉載日としての行事行われぬ。服装検査なく、終了後一時間整頓・手入を行う。三明さんに写真をとっていたゞく。九時半より十一時まで国語をしらべ、午後は十五まで集会所に過し、後は雑務をなせリ。夕食後の軍歌演習は松崎駅まで往復、速歩、駈歩を入りまぜて為す。
今日は昨日の計画の予定通り行き、一日が愉快に過せたり。吉武より写真を受け取りて来たれども、以外に弱々しく写りいる事に驚く。此れ吉武が下手なる事も其の一つと思う。光線の工合悪く、あまりに明るすぎる。今日は平常日に比較し涼しすぎ朝二・四度、昼に八度ありたり。自習時間に幾何を全部、漢文を一部しらべたり。
朝より風加わり寒さ一層増す。八時に室外にて零下五度なりき。教練考査あり。行進間の諸動作及び一搬上官に対する敬礼なりき。町田生徒監殿は今日来られしが、なお感冒面白からぬ故に、一週間休まるると言われたり。随意運動時には明日の体操の準備をなしたり。
我が軍は八日二十四時に出発し、九日零時十六分ジョホール水道を渡り、シンガポール島敵前上陸に成功せり。
漢気前日に同じ。午後休操考査ありて、十二階段の跳下り八段及び肘懸上りなりき。昨日の教練、今日の体操考査に依り予は思えらく。かくの如く一人にて行う故に、少しあがりて、動作が落着かずに、遂に失敗に終らんことを。此れにより、沈着が必要なることがわかる。
剣術には行かず。今日の朝食後を以て寝室取締勤務は終了す。食堂の配置変更が行われ、一・二・三年二訓は南側二列となり混合なりき。予の食卓は藤森さん・深谷さん・早野さん・御手洗さん・志摩なりき。夕食より深谷さん取締となり、代りに栗林さんが来られたり。八時五十五分に大講堂に外出の服装にて集合、九時に紀元節拝賀式行わる。九時半に終了以後は十二時まで勉め、午後は三時より始めたり。今日は稍天からりとし、近日めずらしき日なりき。夕食後に軍歌演習あり。明日考査をひかえたる俺にとりては稍不十分な日なりき。
我が軍は本日八時シンガポール市に突入将に市街戦となれリ。
幾何・独逸語考査あり。午後は訓育学科考査及び剣術あり。剣術は明日の準備なりき。今日三つの考査終了し、ほっとしたり。手塚・田中入室す。
此の分にては未だ寒気喊〔減〕らぬ模様なり。漢文は小林教官殿依然として欠勤の故今日も亦習字なりき。文法は教程の部は終了せり。午後は剣術考査あり。十四時二十分より、面の連続斬撃及び、小手・面・胴の三段斬撃なりき。運動班運動は一年二年にて行われ、ドッチボールなりき。三年は訓育班にて藤崎台まで往復交換駈歩なりきとぞ。
田中真美は「キョウマク」にて入院したり。我が軍は依然として市街戦を行いつゝあり。
今日は朝より割合に暖く、夕に至りて小雨は雪に変じたり。今日より明日の朝食後まで取締となる(日直)。故に午後は眼の回るいそがしさなりき。六時間目は消火器の使用法に付き河野軍曹殿が行われ、七時間目は身辺の清潔整頓なりき。随意運動時は剣術へ行きたり。寒気を感ぜず。土曜日が故に嬉しくもあり、又忙しくもある日なりき。花田軍曹殿は明日より来られたり。
昨夕より降り始めたる雪は今朝に至りて、十五糎位になりたり。依って、日朝点呼後、直ちに体操服にて校庭に集合し、奇・偶数運動班対抗の下に棒倒し兼雪投げ合戦行われ、結果、我々の勝利に期す。体操服一枚にて雪中の乱闘、予は棒の守禦なりき。八時半外出者のみ服装喧嘩あり。予は外出し田中を見まいに陸軍病院に行く。田中は第八病棟第一号室にて、一室に、兵・下士官が三十名居りて、毛布きたなく、実にむさくるしき所なりき。聞く処に依ると食事は、幼年学校の素食日に等しと云うことなり。田中も元気なりき。病院を辞して偕行社に食し帰校す。午後は整頓等をなす。昨日より日直の取締となる。
本日十九時三十分 シンガポール陥落せり。敵は無条件降服なり。
〔nagajis:「降服」→降伏。「勝利に期す」→勝利に帰す〕
シンガポール陥落祝賀行事ありたる故学科なし。藤崎宮・護国社・雄健社参拝す。今日は朝食各個にて七時三十分に、外出の服装に脚畦をうがち集合す。藤崎宮まで予行の軍歌演習をなし行き、九時に正式参拝をなす。以後は大通を辛しな〔青訂正:島〕町の方より護国神社に途中軍歌連続にて行き参拝す。帰りも亦軍歌演習をなし中に、一粁を駈けたり。行路は往の逆なり。学校著十一時五十分なり。直に雄建神社〔ニ〕参拝し、東條首相の挨拶を聞く。会食なり。非常に多かりき〔し〕が全く食したり。十四より一年は棒倒し、二・三年は野〔nagajis:「球」ヌケ?〕試合をなし、祈賀行事了る。以後は随意なりき。
惟うに喜びのみなし〔に過さず〕護国の神となられたる英霊に対し敬を表せざるべからず。〔朱傍線、欄外「◎」〕
〔欄外朱 2.20と「下川」印〕
地理の考査あり特に悪く後期末考査しょにちよきかと思いたり。独語も不良なりき。一時間目と三時間目は自習なり。考査中なれど術科あるは幼年学校の特色ならん。〔末一文に朱線、欄外「然り」 欄外印「下川」〕
代数・歴史ありたれど、代数は侮りたる故に半分のみ出来残念至酷〔極〕なり。午後は歩兵隊見学の予定なりたれど、変更し、先水曜の行事、兵器・防毒面検査あり。考査中なるがやはり土曜は楽しきものなり。
五時半起床し、食事各個服装検査なくして各個に外出し東宝映画場に向う。場にて、大東亜撃滅戦・戦争とスポーツ等を見て、体育にて軍事との関係を知り、戦況ニュースにては胸おどらせたり。十二時帰校す。以後は整頓をなす。努める気になれず。今日は考査中なるが思を考査よりはなれ、愉快にてもありたり。
夜に雨多く降り雷声を聞く。久闊久しく聞くものなれば、いとめづらし。朝よりむし暑く、十有度ありたり。幾何・国語を以て一年の考査の終りをつげ何となく軽々しき気分なり。午後は剣術交換駈歩あり。特に後者にありては四十分間を軍歌に合わせて駈けたり。後種痘あり。故に入浴禁止となる。人は考査中内務乱れたれど、予は左様の事なしと思う。〔「予は~なしと」に朱傍線〕
今日もむし暑く昨日を越す。授業に精入らず。午後は雨のため体操を変更して剣術あり。随意運動時も剣術をやり、武を練る。
からりとしたる天気なれど薄ら寒し。午後は向坂行軍をなし、途中に於て連絡兵動作をなす。向坂は乃木軍、薩軍のために軍旗をうばわれたる地なり。(明治十年)復りは五人一組となり、各々が斥候にして学校まで復りたり。行軍は終列なりたる故以後〔朱棒線し「?」、「後」を「外」に訂正〕にきつかりき。直に入浴し気分をさっぱりなす。鍛錬の日なりき。
次第に暖くなるをおぼえたり。雨の為術科は訓話・自習・剣術にて体操なし。随意運動時は十七時十五分まで剣術をなし、汗にまみれて戦う。運動を為せば暖くなるものなり。寒中に暖を求むる方法は多けれど剣術最も良しと思う。
今日の如き春日和は実によき心地なる哉。術科は教練・体操にして運動班運動は交換駈歩なりたれど二十三日に比し以外〔意外〕にきつかりき。八景水谷に行きて、八景水谷がかゝる公園なりと始めて知りたり。
〔「交換」手偏抜けを朱訂正〕
すでに、二月も過ぎ、時のたつのに〔の〕、早きを知る。午後は体操及び大掃除あり。昼食後の術科は腹ふくれいる故に、きつし。大掃除の際は事務室をなす。同検査あり。十六時半に終りたる故随意運動には出でず。休暇には近く、日曜を明日にひかえ実に心楽し。二年生は今日二十四時まで夜間演習をなすとぞ聞く。十三時より。