nagajisの日不定記。
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明治節なる故に休業なりき。
午前中はわずかなるが勉強し、午后は二月ぶりに集会所へ行き酒保へ行く。然し腹満てる故食するも、うまからずして且つ夕食も食す能わず。やはり酒保は我にとりて最もおそるべきものなりと思いたり。何なれば予の腹には糖分満ちいるならん。自習時間が長くなり一層勤むるを考え嬉し。
一週間ぶりに授業を受く。今日より一年の三学班のみ午後の自習時間を利用する独語研究会をつくらる。十四教室に於て行う。予惟うにかくの如く、特別になさんには成績も次第に上らん。久方ぶりに運動をなし心地よし。「中抜ケ」が出来る。
術科も随意運動も精一ぱいなしたり。故に命年の如く激しき運動をなしたるため熱三十八度に上りたるため就寝許可を願い出たり。友は一心に勤めいるに我一人寝る。なんと残念なることあらん。早くなおるを願いたり。
昨日の熱去りたり為授業をなしたり。然し関節いたき故運動なさず。自習室に一人残るもあわれなり。一千六百駈足ありたり。学館の方面は至りて時間多し。故にこせヽせずして可なり。いたみの後は一層運動能率上ること確実なり。
昨日の痛いづこへか去り元気回復し休〔体〕操・教練・剣術皆なしたり。数週間の好天気にて地カラカラとなり葉よごれいるなり。
久方振の雨なり。午後月例身体検査あり皆増加せり。身〇・九、重一キロ、胸一糎、呼差一糎なり。後も今回の如くあらんことを臨む。常に深呼吸をしたる利あること今日眼前にあらわれたるなり。以後自習あり、夜は運動班会ありて、此の上なくさわぎ始のしゅしに達したり。特に一年二寝室、二年の三・五寝室。
服装検査後直ちに大講堂に於て「ニュース・東幼・陸士(予科)の映画見学。以後は兵器手入及勉強をなす。午後は図画を記すこと三時間に及びたり。麗かなる秋の日曜いと静けく和気靄々として空中を行くが如し。遂に集会所へも行くこと能わず。
〔nagajis:」が抜けている〕
兵器検査のため六時起床し三十分朝食し、以後は準備とす。二十分間なりというも、予には大だげきなりき、然しこれ則ち訓練なりと思えば何ともなし。何故か一日中ぼーとして学科にも実入らず。体操の方面、入校時に比し向上したること明かなり。
衛生講話ありて冬に対する準備に就き、とくと承る。特に、しもやけは予耳に生ずるなり。今年こそ生ぜざる如く今の内より鍛えん。教練ありて駈足中の諸動作に就き修習したるが以外〔意外〕にむずかしくありたり。随意運動時は交かん〔換〕駈足にて校外を域、幼年学校生徒たるの動作を諸々の人に知らしめたり。足並揃えて行進するも、厳かの如くもあり、心晴々とし、五十人皆気が合したる時なる故、其の団結たるものがよく表面に表れいるなり。明日は終日校外訓育金峯山登山なる故、二十時半点呼あり、二十時三十分消灯なり。
〔nagajis:最後一文原文ママ〕
六時起床なる予定なれども、四時半非常呼集あり早発。終日校外訓育にて金峰山登山をなすものなり。往復電車なりき。荒尾にて朝食をとりたるが、以後の行軍はきつかりき。特に「猿スベリ」とて急なる坂を一気に登りたる際なりき。きつい、これ即ち鍛錬なりと思い、広野に働く出動軍人を考うるに、何と恥ずかしく、又、速に、これに打ち勝つ体力をつくらんが以後の我等の任務と思う。頂上よりの眺望特によろしく、海・島・山・平野・川、一目中にあることこの眺望の特色なりと思う。山は阿蘇の如く、外輪山にて廻らされ、火山なりと聴き驚きたり。他道を通りて通越(峠の茶屋)にて昼食す。以後軍歌を歌いしが、同じものを度重ねてなせるため、それにあき、元気一層減じたり。帰校十五時。通越にて写真機(訓育班のもの)を予の手にてうつしたるが、科学に熱意のたらぬ予に良き刺戟を与えたり。これ喜ぶべきことなり。夕食まで手入なりき。
〔阿蘇の「蘇」、減じたりの「減」、刺戟「戟」に朱で訂正〕
特別行事とてなし。体操の際に「海老上リ」が上り嬉しかりき。随意運動時に、各方面の事をなしたり。一日やや不愉快なる日なりき。
一般に暖し。生徒監殿の御注意の如く、上級生の良きをとりて良き伝統を作り、悪点は真似ずに取り入れざるべからず。交換〔手偏抜け朱訂正〕駈足ありたれども、あれ程の鍛錬にては不足なりと思う。秋の今日過食のため下痢したり。人太るべき此の秋に、下痢するとは何事ぞ。遺憾とするのみならず恥とせざるべからず。契闊集合所へ行き、書を読みたのしみなり。
二千を始めて単独にて走りたり。長距りは心身の鍛錬上最も良しと思う。夕食後は明日の準備にすごし特に何もなさず。
りん時外出しキツジ〔吉次〕峠をこえ河内に出て百貫石に出ず二時半より十七時まで、実に十五里に及びたり。きつきこと此の上なく、あとに三里は歩くこと能わず。河内のあたりはみかん畑二三里つゞく。命日井の行事にふさわし。又よくも昔の人みかんの木を植え、手入れしたるものかな。
〔欄外朱:よき鍛錬なりき〕
〔nagajis:「命日井」は心許無し〕
昨日の行軍のためまめを生じ歩くに困りたり。幾何の考査ありたれど大体はよし。体操の時間は愉快に能率上りたり。「九州男児」を練習したり。夕食後校長閣下の放送を聴く。「青少年に対して」。一日が愉快なりき。
教練は我等のなす仕事の中、最も厳粛に行い、体操はのびヽと剣術は真剣に行えと。真に然りと信ず。笑いつゝ教練をするも能率上らず。かたくなり体操するも上達せぬのみならず利あらず。剣術は人を切る術なる故真剣なるを要す。二千米を七分五十一秒にて走りたり。然しきつからず。切磋会の結果自然の中に行われつゝあり、これいかんなり。
〔nagajis:日付が間違っているが訂正されず。以降しばらく続く〕
町田生徒監殿陸幼試験乙臨時委員として鹿児島市へ出張さる。午後校外演習あり、三学班は一訓と行動す。然し対抗演習にて、丘候・歩哨をなす。歩哨となり、よく状況わかる。今日も愉快に一日を過ごすことを得。午前二時大地震ありて、一分間続く。驚き四寝室の者十一名は寝台下に避難したり。地すべりの如く思わる。光を発したるは、電線の摩擦なりと聞く。
朝に霧たち込む。剣術の際にためし切りがありて、見学す。ずばりと成りたるときはすーとするのみか腕前に驚く。ためし切りにて多く切るには、一つは力も必要と思う。中抜け成功す。
一日が愉快に過せたり。独逸語は我の好くする所の科目なり。故に、やり次第上達せんこと明らかなれども、今日まではいはゞ眠りいたり。活動せんとすれば上達するぞ。学芸会の練習。
四十分、三時限授業ありて十時五十分より、大講堂に於て十六時まで学芸会ありて、特に、軍用犬の訓練に就きて実際軍隊から来てなされたので教訓多かりき。了は独国家、野ばら、空の荒わし・如意輪寺を合唱す。
〔nagajis:「了」は予か〕
〔欄外:新嘗祭〕二訓のみにて二十四人臨時外出をなす。雨なれども活動見学に行く者多く、残留者九名なりき。午前中勉強し、十一時より集会所に行く。然して食し読む。一日陰く、何となく、いやな感せり。雨降りより一天晴れの天候を予は好む。
午後体力機能検査あり以外の進歩に驚く。「なせばなる なさねばならぬ 何事も なさぬは人のなさぬなりけり」これは此の話に最も適すると思う。今後も此の度の如き進歩をのぞむ。
〔nagajis:「以外」→意外〕
博物は今日より動物に入る。午後亦体力機能検査あり。昨日投げて最高なりて三十二米なりし手榴弾投擲三十五・五米行く。又二千米にありても、平常の練習の末、六分五十秒なりき。我此に於て二千米に於ける自信十分に生ず。脚痛きため今日の一里の長距離競走思いやらる。随意自習にあらず。
終日剣道大会行われ、一年は九時より一里の長距離競走行わる。始めの中あまりゆっくり行き過ぎ其の結果四十三番となり、二等の賞を与えらる。徳富四等、山根五等となる。午後は大会見学をなす。大会の結果三運動班は四等となり、残念極まりなし。又しても六運の手の物となる。脚なお痛し。
先々週に終日郊外訓育ありたるため、今日は水曜日の授業ありたり。午後体操の際「肘カケ上リ」上り嬉し。此に於て訓育の際には、平常ならぬ物も出来る事をおぼえたり。剣術は第一試合教修〔習〕あり。又随意運動時も道場をあばれまわり鍛う。明日をひかえて二十時三十分消灯
四時半起床し直に朝食をとり五時三十分集合したれども、雨のため相撲中止となり明日に延期す。金曜日の授業ありき。防毒面及び飯爨〔盒〕を個人に渡され記名す。夜の行事は明日に同じなりき。中期も今や四分の三を過ぎたり。又期末考査もそろヽ近づきたるにより、いよヽ奮励努力するべき日となりたり。冬休暇も近日にせまる。いよヽ中期の残りを有意義に過さん。
五時二十分に出発し途中交換駈歩にて南熊本駅付近の角力場へ行く。然して序の口より横綱に至る間皆取組み十六時終了す。十八時帰校す。相撲にて感じたることは、十両まして幕内力士は八百人中の上より五十番程なる故、余程偉いと思う。然して大体に於て体の大なる者が幕内となる事を感ず。
嗚呼すでに十二月も間近となりたるか。つくづく感ずるに中期は忽ちの中に過ぎ去りたることを。あと二十五日にて冬休暇となることを思い嫌しさ一入なり。北島より体格検査合格の通知来る。喜ばしき次第なり。午前中整頓・勉強をなし、午後は集会所に楽しみたり。
〔nagajis:「嫌しさ」→嬉しさ?〕