nagajisの日不定記。
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晴の第四十六期生入校日なり。十時より一時間遊戯ありたる他随意なりき。会食時に当りては新入生父兄も共に食す。十四時半より入校式あり。一ヶ年前予もかくありたるかと思うと当時が思いやられたり。新入生の姿何と愛らしきかな。今年度は一般に身長低し。何も知らざる当時より此の発達豈偉ならずや。夕は明日の奮闘を眼前に自習す。
今日特に感じたる事は動作の間に時間が余る程あることなりき。又これにより諸動作が落着きて出来る如くなる。国漢乙は福島安正大将の話なりき。月例身体検査ありたれど前月より小さくなる。随意運動時は前日に同じく、球戦をなす。裸体にて。体の調子益々良好。
神武天皇祭により休日なり。点呼後直ちに日曜の剣術をなす。朝なすは此の季節に良き感じなり。今日は日本晴にて気温も丁度よく風も吹くでなし、誠に麗かなる休日なりたれど、休の調子悪く外出もせず・運動せず舎内に引込みいたり。何と情なき事かな。然し充分休養の結果大部分調子よし。手塚と三時間遊ぶ。夕食後台上にて令〔例〕年の通り一・二・三年揃って面接す。池田、佐中江口なりき。此の記念すべき日に此の行事恥ずべし。
〔欄外朱:疲れたるときは休養が第一なり無理をすべからず〕
〔「此の行事恥ずべし」に朱線〕
終日温く最高二十七八度ありたり。朝に、四百米を走る。積極的鍛錬には以てこい〔好適〕の行事にて以後毎日なさんと思う。午後健軍の本義につき訓話ありて、特に其の使命の重大を知る。手旗(作業)二時間ありたれど不心得の為うまく行かず。残念。夕食後柔道場に於て第三・四運動班会あり。(一年を除く) 二年の始の緊張せざるべからざる日としては大率可なりたり〔き〕
四時雷の轟に眼をさます。六時には彼の大雨の為生徒舎前は雨水にて一杯なり〔杯の字訂正〕。剣術に行く。非常に暑し。昨日暑かりしも大雨の前兆ならん。外出せず午後は集会所に、午前は勉強をなしたり。北島等と遊ぶ。夕食後十四教室に於て一年に軍歌を教う。脇・甲斐は帰校点呼におくる。雨十四時より降り出す。愉快なる一日なりき。
今日は一昨日に比し非常なる寒さなり。即ち自習時間に於て身震いするが如くなりき。故に朝の鍛錬時は裸体にては稍々涼しく特に、四百米馳走にては気持良かりき。生理衛生始めて行われ、歴史は十五教室に五十人のすしづめなりき。
昼食後柔道衣袴渡り、早速六時間目は柔道なりき。即ち衣袴を着し教官殿より目的其の他を習う。柔道は今日が一生の始なり。随意時も亦道場にて柔〔道〕をなす。訓育学科「陸軍現制」に付きあり。特に此れ〔之〕により陸軍諸学校を知る。益々努力奮闘すべし。
寒益々増夜半に数回眼ざます。朝寝室掃除をなし後裸体になり例日の如くなすも寒の為手のびず。斯く寒き折に鍛錬するも気持よし。
今日より三・四時限間の二十分休憩を利用し二年三学班は軍歌演習を中心に、色々と担任教官殿となす事となれり。
午後五時限科学、六・七時限即ち随意運動をせずして第十四教室に於て作業(字号通信)あり。要領は生徒監殿が送信機を打たれ、我々がそれを聴きて耳の鍛錬と同時に通信技術を習う。夕食後台上に於て一年と共に軍歌演習あり。今日の自習時間にては存分活動すること能わざりき。真剣・真面目なる一日なりき。
大詔奉載日なり。本日比々谷に於て九軍神の葬あり。
午後郊外教育歩兵隊見学を行う。十二時四十分集合外出の服装にて。往は徒歩、復は電車なりき。見学した要旨を記す
一、兵舎の一般状景
二、大隊砲・歩兵砲・そく射砲の説明
三、機関銃に付きて諸々の説明。分解す。
四、志摩隊(中隊長は志摩一郎の父なり)の内務の実〔際〕を見学。
五、自動砲の説明。分解す。
六、下士官の銃剣術 等なりき。
機関銃の音は軽く、自動砲の空砲、底力あるかの如く聞ゆ〔「底」朱訂正〕。一般に連隊は、こせヽしていそがしき所なりと知る。内務は我々よりはるかに上手なりき。将校生徒頑張れ。〔欄外朱:落着きて勉強出来るは学校のみなり/■努めよ〕 以後将校集会所に休む。立ち続けて大部きつかりき。
今日始めて工作あり。二年は工作にて、ラジオをなす如くなる。工作二時間、電気の説明あり。随意運動時は台上に土表〔俵〕出来たる故に、二年は土表〔俵〕固めとなりき。即ち、一等兵の太い角力とりの如き者に向う。予、彼を押すも、わずかも動かざりき。
特に朝に自習す。午後五時限剣術、六時限教練、十六時半より交換駈足をなす。今日は術科全く行われ、十七時十五分駈歩終了す。以後十分にて至急の中に入浴す。連隊にて鍛わるゝ兵の苦労が之に依りてもわかりたり。夕食後台上にて訓育班切磋会あり。
朝の鍛錬は筋肉(腕と肩)痛きにより素振五十回に留む。これ悪因とならんとは。午後体操に於ても痛かれど、充分気を張り通り抜く。十五時より学用品検査あり。此処に於て精神力と体力の力くらべを行いたるも、遂に精神力負け、薄寒くなり熱生ず。時に、三八・三あり。負けたる原因は少し寒いが病にならざればよし。さもなくんば不可。の念をいだきし故なり。十六時半就寝す。
此の処三年間初外出は雨なれど今日も亦雨なりき。起床時の体温三七・八なり。故に終日就寝の覚悟を定む。十七時十分起床す。十五時より平熱にもどりたる故なり。
日朝点呼後三八・三度ありし故就寝す。学科に出でず。前田も然り。午前中就寝す。診断の結果練兵休となる。時に、三七・一に下りいたる故なり。森木は午前中頑張り三九・一にて前田と共に入室す。大部感冒が流行すならん。井内も練兵休となる。ただ残念に思うのみ。
〔nagajis:森木は森本か〕
日朝点呼後七度あり。診断により劇動級〔休〕となる。音楽の末次教官殿今日始めて飛行機に乗られたると。七時限自習後下川生徒監殿訓話あり。特に衛生に就き話されたり。午後連続にて雨なり。体の工合も大体良く楽しき一日なりき。
修身は我が国の神話と歴史につきあり。特に関係あるを知る。物理は密度の実験なりき。午後校外教育あり。即ち医科大学に見学に行き。解剖室・標本室等を見る。人間の生首あり。ミイラあり。屍蝋あり。見る物今思い出すも飯の食いたくなき、いやな感じなりき。往路行軍。帰路電車。数日の休養の為大部体の調子整いたれど、今日又稍々疲る。十分養生し、充分活気生じてより活動せんと思う。心の心から癒らん事を願う。
〔「癒」に朱訂正〕
父の命日なり。
今日は朝より終日雨にて陰気なりき。然れど心は治癒〔心足追加訂正〕になり将に天をもつかんとす。午後字号通信・剣術あり。運動時も亦剣術をなすも久しく素振をせぬ故に竹刀が重く感じられた〔ぬ〕。
佐中より丹宗という中学当時の友が補欠にて熊幼に来る。此れにて一年四組より五人となる。
午後は訓話・体操あり。運動班運動にては兜山登山競争をなすのみにて何となく物たりなく感じたり。補欠として二名入校を命ぜらる。丹宗の軍服姿に会う。
予未だ時間の利用不十分なり。特に、三度の食事後と夕食前なり。朝昼食後・夕食前等は自習を行いたきものなり。
午後火災呼集ありて消防演習あり。予は、職員伝令となる。佐々木曹長殿の処なり。十五時より愛校作業あり。
十六時四十分空襲警報響く。予等直に其の動作に移る。何故なるかと云えば本日十三時三十分に当り、東京・横浜川崎地区に敵飛行機の爆撃行われたるによる。本土に空襲を受けたるは開闢以来始めてならん。此際我が方には損傷僅少にして、敵は九機を撃墜したり。遂に来るべき時は来たり〔朱「レ」を添えて「来たれリ」に訂正〕。
五時半より臨時外出し岩倉山に飯盒炊爨に行く。兎谷方面。予個人としてなすは今日が始めてなり。九時半帰校す、朝に於て山野跋■〔足篇に歩を渉に朱訂正〕をなすは何と涼々しくして気持良き事かな。以後もつとめてなさん。午前中かゝりて十時より五通手紙を書く。午後は十六時半まで生徒集会所に遊ぶ。今考うるに、今日の後半は実に、つまらぬ事をなしたと痛感す。然〔併〕し、学年始の覚悟に副うものなり。
昨日は、名古屋二、三機、神戸にも又一機、滋賀にも、和歌山県にも来り爆弾投下機関銃掃射をなすも損害少しな。
警戒警報昨夜解除されたり。終日雨にて陰気なること甚だし。
午後は訓育学科・柔道あり。柔道は先時間に於て休みたる故稍むづかしく感じたるが行えばやさしきものなるかな。剣術をなす。特に所感なし。
一週間ぶりに運動場を走り懸垂をなす。涼々しき中に朝の軽き運動・散歩何と清浄ならざるべからず。今日は全学年七時限まであり。十五時程に警戒警報響く。水戸に米機二機来り、二機共海中に墜落せしめられたり。愉快ならずや。
朝に寒く眼を度々さましぬ。
教室掃除故朝の鍛錬はなさず。
午後郊外演習 伝令動作に就きあり。第三学班は第三訓育班と行動を共にす。桜山に至り、ついでに神風連其の他勤王の士の墓に詣ず。十六時二十分帰校。愉快に実戦的に修得をなし得たり。
〔欄外朱:無理をすることなく漸迫的鍛錬を■■む〕
掃除なりしがふるって走る。
午後は工作ありて愉快に明解に掛林教官殿の下に授業出来たり。随意運動時は生徒監殿注意ありて費す。今日の所感は特になし。
予残念なるが四月二十日(月)より特別下級品を受くる事となる。牛乳なり。外出名簿の出現。
〔nagajis:「特別下級品」→特別下給品か〕
斉藤教官殿出張の為三浦教官殿より授業を受く。午後は剣術・教練・剣術と三つ連続にてあり。休日を明日にひかえたる日にとりては平常に比し稍〃決行の気分に乏しく、だらヽとしたり。運動班の剣術にては一年初めて加わり運動班の全員が此処に揃う。試合ありて予は三名に勝越したれど山根に兜をぬぐ。予今日の此の結果即ち攻撃精神がなしたるならん。されど予にありては以外なりき。要するに攻撃精神必要ならざるべからず。上には上あり。
寝台学友の脇が感冒にて入室す。
今日の夕食後の利用不可なり。
靖国神社臨時大祭なり。
七時四十分より一時間大掃除あり。予は脱靴室に当り𡒯々たる中に働く。九時十分より検査あり。副島先生に電報を出す。十時に集合靖国神社に対し奉り遥拝黙頭〔祷〕を行う。以後土俵開きありて行司を招きて正式に行う。学班より二名出でて計三十八名にて勝負し奇数班の勝となる。会食。
大津方面露営に付き即ち
体操衣袴に背嚢をおう。
毛布各二枚を自転車に計十三名
十四時半出発予は自転車にて白川橋に至り後二里半行軍。
大津を距ること西南に、二里の地点に露営。
予は交渉班即三班となる。時に、十七時。
十九時半は夕食す。唐いも等あり。
二時より天幕内にて話し二十一時過眠に就く。
今日はこせヽした〔せる〕忙しき一日なりたる〔しが〕が愉快な鍛錬日なりき。
〔nagajis:「しが」朱訂正は「が」が余計〕
鍛錬の一日なりき。即ち、
五時半起床す。九時半当地を出達す。
大津着十二時前→大津にては日吉神社参拝し、つゝじを見学す。
十四時四十五分発にて帰る。龍田口より徒歩にて十六時十五分帰校す。
宮田・西井さんは大津より自転車にて毛布を積み帰られたり。
何と愉快なる露営なるか。再び企図せん。
自習時間は疲れ・睡〔朱訂正〕眠不足にて意識濛朧として何も不明なりき。
昨日歩きて驚きたる事は、道路は幹〔乾〕燥しきっているに、どぶ川は満々として流れていることなりき。早く雨降りて塵よなくなれと思っていたり。然るに今日の雨亦幸ならずや。疲れ未だ治らずぼう然とす。独乙語は変更あるを知らざりし故自習となる。
午後は剣術・自習・柔道あり。柔道の際はもゝをひどく打ち痛む。
相変らず雨なれど陰気にして気暗し。されど気温は多くして裸体なるも変化なし。終日昨日の柔道の痛みあり。
午後は唱歌・自習ありて術科なし。
一日休養的な〔る〕日なりき。
天長節なり。 陛下には第四十一回目の御誕生日なり。真に畏こ〔朱打消〕き極みなり。
七時二十分より 御真影澎湃〔奉拝〕式あり。後帯山に至り観兵式を陪観し十一時半解散す。解散後は田村と行動を共にす。即ち長崎書店に行き、南洲遺訓を買入し〔れ〕、偕〔行人偏を朱訂正〕行社に存分飲む。久方ぶりなりき。
軍歌演習なくして、二十時点呼にして、二十時三十分消灯なり。立ん棒にてきつかりしが一方面白き日なりき。
靖国神社例大祭にして休日なりき。此の休日を利用して金峯山登山をなす。即ち
1.四時出発、八時三十分前大将陣着、十一時頂上征服、十二時三十分下山。十五時七分帰校。
2.森・北島・井手・丹宗と同行の予定なれど、一年→十二人、二年→五人、三年→二人にして計十九名なりき。一年多き故緩りと歩行す。故に時間かゝりたり。
3.森等四名は岩戸観音に行く故復り峠之茶屋より分れたり。
旧友と共に、期こそ違え友は友なり。久方振りに一日を過し、愉快に昨年の俺に付き語り合い等なしたれば当時が思われたり。愉快なる鍛錬の一日なりき。