nagajisの日不定記。
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自分の実家の近くの町に来ている。湯布院や日田クラスの大きな街の間にある冴えない集落。しかしここに「特別なもの」があった。その「特別なもの」を調べに来ている。
古老に出会った。滝川のあの方のような、「沈黙の艦隊」の竹上首相のような、外国掲示板でそっくり画像があがっていたクシャおじさんみたいなおじさんのような感じの人。闊達としていてこちらの問いにてきぱきと答えてくれる。良い人に出会った、この人なら信頼できるという気持ちが自分の口をひときわなめらかにする。
2つの大きな街に挟まれ、それらが大きな吸引力として在って、対してこの集落は比べ物にならないほど小さく、鄙びた土地でありながら。「こう言っては申し訳ないけれど」という前置きを使った挙句に---ふだんの物言いでは決して使わない類の言葉だ---謝るくらいならするな使うなと思っている---「だのにこの小さな集落には○○○がある。それが不思議でならないのです。……私はそれが知りたくて大阪からやって来ました」。何故でしょうか。何かご存知なことはありませんか。どうか、教えてくださいませんか。そういった内容のことを立て板に水の勢いで話した。決して丁々発止な言葉選びではなかったけれども、知りたいという思い、熱意の総量は十二分に言い表せたように、喋り終えて思った。
さあ、私の問いに、古老はなんと答えてくれるだろうか。どんな明瞭な答えが帰ってくるだろうか。それによって自分の疑問が氷解するだろうことを、答えを聞く前から予感していさえする。さあ、答えは。
「それはやなあ……」
と古老が口を開いたところで、目覚まし時計が鳴り響いた。
電池がへたりかけていて、ごろごろとしか鳴らない目覚まし時計のこの音量が、この時ほど気に障ったことはかつてない。
悔しい。あんなに上手く自分の気持ちを、疑問を説明できたことはなかった。きっと絶妙な、疑問が氷解する答えが返ってくるに違いないと思っていた。答えが聞きたかった。残念でならない。しかし後で思い出そうとすればするほど「特別なもの」が何であったかはっきりしなくなった。隧道や橋のような土木構造物であった気もするし、煉瓦工場である気もしてきて、結局○○○みたような書き方しかできない。お前の熱意とはその程度のものか、と思ったりもする。そして立板に水を再現できないことが悲しい。