nagajisの日不定記。
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一息ついたのでパソコンの中のデータ整理をしていたら「tmp.txt」なる面倒臭い名前のファイルが出て来た。日付は昨年の10月19日になっている。開いたらこんなんだった。何をやっているのか>おれ
夢を忘れない、というと聞こえはいいが本題は一昨日見た夢の話だ。決して何かの比喩でも寓話でもない。天地天命に誓ってもいい。余りに変な夢だったので記しておく。つまらないことを書いてしまい申し訳ない。
寝ているところを蝙蝠の赤ん坊に噛まれた。そいつはおれの右の耳の穴に口を突っ込み、耳の穴の側面、耳腔とでもいうべき場所に噛みついている。痛くはないが感触がたまらなく嫌だ。耳の穴からぶら下がる生暖かくてもぞもぞする物体。口を突っ込んだままのそいつを右手でわし掴みにするが全然離れる気配を見せず、むしろより奥に、より強固に食らい付かれてしまう。ふにょふにょした皮膚と筋ばった指の骨の感触が混在した奇妙な感覚が手に伝わる。臭ったらかなりなことになりそうな気がしてかえってその手を離すことができない。
が、どうもこの蝙蝠は○○王国の「時期国王を探す使者」だったらしい(この辺りのいきさつははっきり覚えていない)。はからずも一国の国王候補になってしまったおれ。いかにもそれらしい、豪奢な恰好をした王様の前に連れて行かれる。王の証として渡される一つの指輪。しかしそこには最後の試練が待っているのだ。
指輪には次のような図が書いてある。ここで「角2」に相似な角を答えなければならない。しかも直ちに。一瞬で。間髪入れずに。1秒たりとも間を置かずに。
現実世界でも「即答しなければならない」というシチュエーションはとても苦手で当意即妙とかいうのとは縁遠い人間な自分である。「答えなきゃ」という焦りで一杯一杯になってしまい、ごく当り前のことでも間違えてしまう。下手をすると間違いを間違いだと解っていながらその間違った答えを言ってしまうことさえある。この場面でもなぜそんなことを答えなきゃならないんだという疑念などハナから存在しない。ネジが右廻りか左廻りか解らなくなった時のような、sin30°が1/2だったか√3/2だったか断言できなくなった時のような嫌な思いばかりが先に立つ。口の中が苦くなる。
この場面で正しく答えられれば国王になれる。しかしそのために越えたいとは思っていない。それより何より間違えずに答えなければならないと己れに迫る脅迫観念との葛藤。その焦りだけが鮮明に尾を引いて、それ以外の場面がフェードインしぼやけてしまう。
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指輪を受け取った。どうやらおれは答えられたらしい。何と答えたのか自分にもわからない(素面で考えれば間違えようもない図であり問題なのであるが)。王になった自覚などない。あるのは無事に答えられたという安堵ただ一つだ。
王の証として受け取った指輪。それはその図形のごとく輪の内側に突起がある。この突起が邪魔をして、指の太いおれの指には入りそうにない。入らないが王であることは確か。自分の好きなようにすればいいだろうと、どこからともなくルーターを取り出して削り出すおれ。王国3200年の歴史だとか次に王になる人物のことだとかなど考えていないおれ。回るルーターの刃先。
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…気がつけば、それは夢だった。右手に蝙蝠の赤ん坊を握り締めたままだ。そっと掌をほどくと、よろよろと弱くはばたいて、母親蝙蝠の懐へ帰っていった。寄り添う2匹の遠景。掌にはふにょふにょの感覚だけが残っている。おかしな夢だとは思わず、蝙蝠が離れ、何事もなく親元へ帰っていったことへの安堵で心が和む。さ、寝よう。
…本当に目が覚めた時もその感触が残ったままだった(自分の夢には色や感触、匂いが関係することが多い。多分変なのだろう)。いったいおれの頭のどこにこんな愉快な発想が残っているのか。そんな未発見な自分を見させてくれる夢。大好きだ。