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旧道倶樂部録"

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2014-03-31 [長年日記]

[独言] 妙な映画をみた

受付が出資したという映画を見に行く。昨年奈良県各地で行なわれた「はならぁと」というイベントの記録映像である。「はならぁと」は古い町並みや町家を使って現代アートを展示したイベントだ。

前半はドキュメンタリーでもイベント紹介でもなく、会場のようすを(おもに裏方から)撮影した動画をつなげただけの構成。裏側が垣間見れたのは面白かったが、出展者の仲間内か、イベントに参加した者でないと楽しめないだろうという内容だった(受付ははならぁとのいくつかを見に行っているので楽しめたみたいだが)。とはいえ私も一度は訪れたことがある場所が会場となっていたので「へーそんなことやったのかー」という面白さはあった。

最後の15分くらいで展開がガラッと変わる。取材者(映像の作者)がイベントで知り合ったという人物(S氏という)へのインタビュー。全部の会場を回ったと豪語するこの人物、実はとんだ食わせもので、アートに対するうんちくを語ったりするものの、場で見たはずの作品を何一つ答えられない。「具体的にどの作品が良かったですか」「どの作家さんが良かったですか」と 外堀を埋めていくような質問が繰り返され、どんどんしどろもどろになるS氏。それはちょうど、嘘をついている子供を声を荒らげることなく追い詰めていくのを傍で見ているような心地悪さがあった。最後に「結局あなたは奈良に何をしに来たのですか?」と問われ、S氏は黙り込んでしまう。その後S氏とは連絡が取れなくなった、というナレーションで終了。(今日で上映は終了だそうだから書ききってもよかろ)

あれが実在の人だったら胸糞の悪い追い込みだし、かといって演技でもない気がしたし(あれが演技だったらイッセー尾形も顔負けだ)で何とも判断しようがない。けれどもこのシーンが現代アートを象徴するものとして映像に取り込まれたのだということはよく理解された。作品を見て何ということも感じない、あるいはすぐに忘れてしまってそこから何も得ていない、というような人が現代アートを語る鑑賞者であること(多かれ少なかれ誰もがそういう鑑賞スタンスだろうと思う)、そしてそういう人すら来なくなってしまった時、現代アートはどうするのか、という命題を提示していたのだろう。上映後の挨拶でもそのようなことを仰ってたし。ひどいS氏の扱いも、映像では省略されていたゴタゴタがあり、斯様な仕打ちを受けるべき人物であったのかもしれない。

帰りがけにカフェで軽食を食べつつ受付と議論をした。口下手なのでうまく纏められなかったが要するにこういう感想を持った。現代アートは自己表現だという。作者の思想や理想、要するに作者が( ・∀・)イイ!!と思うことを形にする芸術だ。それを見てもらう時、あえて解説を加えず、鑑賞者の感じたように受け取ってもらいたい、と言っていた作者が映像に出ていたが、あれってどうなのだろうと。そのスタンスはわからないでもないが(文章だって読者に誤読の自由が与えられている)、ならばなぜ展示をし「はならぁと」のようなイベントをするのか。自分の作品を見てもらいたい、批評してもらいたいから展示するのだろう。作品すなわち自分の自己表現すなわち自分自身を見てもらいたいから展示するのだろう。あわよくば共感を得たいと思っている作者もいるかも知れない。しかしそこでS氏のような的はずれな批評、見て見ないと同値の鑑賞をされた時、作者は何を思うだろうか。そこから得た何かをインスピレーションにして次の作品を作るのだろうか。それとも無視するだろうか。いずれにしてもそれは結局負のスパイラルにしかならないのではないか。作者と鑑賞者の乖離が進み、結果「現代アートは難解だ」という地位を確固としたものにするだけなんじゃないか。作者と鑑賞者の交流の場として展示をするならさらに、 表現したいという思いと誤解の許容が矛盾を起こす。フィルターを漉すようにして共感が得られたとしても、同じ志向の人が見つかったというだけで、結局はなあなあの輪が広がるだけじゃないか。そのためのイベントならもとから鑑賞者不在ではないか。云々。映像では「連鎖反応」という言葉が多数出てきたけれども、何かこう、安っぽい別の言葉で置き換えても通用するなあと思ったことだった。

別に現代アートが嫌いなわけじゃない。美しい絵・写実的な絵は美的で当たり前であって、そんな王道に阿らない新しい美を探求しようとする姿勢なんかはすてきだと思う。自分だって似たようなことをしている。だからこそ感じる違和があり、その違和を表明する自由も、以て他山の石となす自由も持ち合わせている。いち無責任な鑑賞者として。なお、私は自己表現のつもりで書いているわけでもないし、共感も求めていない。生きていくために自分が唯一できることをやっているだけだ。

[] 「熊野街道をさぐる」

ようやく入手した。 奈良図で。これがあったらSketch要らないんじゃね? と内心ドキドキしていたが、主に徒歩時代の熊野街道を対象にしたもので、近代以降をメインにしたがっている自分の立錐の余地が残されていた(例えば津越野峠は出て来ない)。助かった……。

帰りの電車で管見しただけだが小森周辺は思っていた以上に複雑な模様。小代周辺も面白いようだ。地元の先生が書かれたものゆえ土地に馴染んだ仔細な記述で勉強させられることが多かった。文字だけで終わるのがもったいない。

[] ちょぼくブック

吉野町の吉野貯木場を紹介する冊子。 奈良図で無料配布していたものだが、これが意外とよい出来で、近年稀に見る良書と思った。

地域おこし協力隊として吉野町に移住してきた若い女性が、女性らしい|新参者らしい初々しい感性で吉野貯木場や吉野林業を捉えて紹介したもの。木材の競りや樽丸作りのこと、吉野でなどをとてもわかりやすく書かれてある。頭の固いおっさん(nagajisお前のことだ)が4ページに無理矢理押し込んだ近遺調報告書よりも何倍もよい。特に私が書けなかった「吉野貯木場の現在」、そして「未来」が書かれてある。こういう冊子を作る人・作るのに協力した人がいる限り吉野の未来は明るいと思った。

今年の3月にできたばかりの冊子。吉野町役場や吉野スタイルねじまき堂(ここであってるのかな?)などで配っているほか、Re:吉野と暮らす会(吉野林業振興協議会内)0746-32-8731/yoshinotokurasu_at_yoshinostyle.jpに申し込めば送ってくれるそうである。


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