nagajisの日不定記。
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もはやobsoleteどころの話ではない旧規格、9ft/12ft円形井筒規格を読み解き直している。我ながら順序が逆だと思うけれども、実地に就いて考えたことでようやくわかったところも多い。
重要なことその1。前々から参照していた規程類聚 附録の図面は不親切。1912『鉄道法規類抄 第2編 附録 (工事図面)"』のほうが各煉瓦の配置を丁寧に図示してくれているのでわかりやすい。この図によってようやく、積み方や煉瓦形状に込められた意図を理解できそうである。なおこの資料では9ft Eの必要個数が600/ftになっているが前者は603/ftで1割の予備も同様に変わっている。これがerrataの結果なのかどうかはまだわからない。
この図をじっくり読み込めば気づかなったことをいろいろと知れる。例えば12ft Aは一段57個を積むことになっていた。円の両端に半分に割ったAを入れ、それが2箇所で奇数の1個になる。9ft Dなどは3/4個が4つ要る。A~Eを並べれば自然に井筒ができあがるわけではないのだ。(このへんの細かい指定をどうするかで配置図のほうだけ一年遅れたものと思われる)
ゆえに揖斐川橋梁の第4橋脚の積みの乱れはかえってその積み方のほうが後に正式なものになったことになる。上の方では問題なく積んでいるのだけれど、それは不整合な箇所を井筒間の壁体によって隠すことができるのでそう積んであるだけかも知れぬ。
図には1ft当たりの必要個数とその1割増(輸送中に破損することを考慮に入れた、実際に発注する個数の目安)が書かれてある。この1ft当たりというのが実は曲者で、厚2-1/4"の煉瓦に目地も入れて考えると1ftに整数段収まらない。収めようとすると目地厚が3/4"とかにならないといけない。そして1ft当たりの段数が非整数になるとAとCの必要個数の計算がしっくりしない。奇数段A、偶数段Cと仮定しても最後の非整数のAはどうするのか。次のCは。このへんいくら考えてもすっと解決しなくて困っている。Aの必要個数は113個/ftなどという素数になっていて、これはどう計算しても配置図から読み取れる一段57個と計算が合わぬ。二段だとしても114個なのだ。
12ftのCの位置と9ftのCの位置はざっくり考えると同じ位置になりそうで(だから同じ形状の煉瓦を使い回せるのだ)、配置図を読んでもどちらも一段36個のはずだが、しかし必要個数は36個の整数倍でないうえに12ftのほうが1個少ない。どういうことだ、ど叫びたくなる。しかし目地込みで考えると(煉瓦巻きの厚は1'11"とされているのでBの長手長とAやCの小口長とから目地厚を逆算できる。この目地厚が5/8インチとやや大きめに取られていて確かにそれくらい余裕がないと煉瓦同士が干渉するかも知れぬ)12ft Cのほうが9ft Cよりも1/2インチ内側に配置される計算になる。全く同じというわけではないのだ。1個の違いがそこに起因するものかどうかまだ理解できていないが、それが直ちに1個差になるというよりも、実際に作ってみたときに現れる不都合(例えば煉瓦の寸法が正確でないとかばバラツキがあることとか)のほうが関係していそうな気もする。
以上のようなことを考えると3インチ形の煉瓦が採用された意味がわかってくる。煉瓦厚が3インチ、あるいは目地込みで3インチだったら、高1ft当たり4段となってAもCも2段分を考えれば済むようになる。必要な個数がさくっと計算できる。煉瓦自身が3インチだと目地を加えるとはみ出てしまうことになるのだが、どうせ煉瓦は厚薄があって多少はそれで吸収できるのだし、1/4"目地であれば4段につき1インチ増すことになるわけだから、煉瓦厚と目地厚を分離して考えることもできなくもない。井筒の高さに12/13をかけてそれに1ftあたりの煉瓦個数をかければ全必要個数は出る。無視して煉瓦を余らせたとしても高々数段分が余るだけだ。
とにかくこの規格の読み解きは簡単なように見えて難しい。そしてわかれば煉瓦積みに関する深いところがわかりそうな気がする。