nagajisの日不定記。
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第十四条 穹窿
一 「べトン」穹窿
(略・型枠使用の場合)
「ベトン」の下層に平二枚煉瓦積を施し枠の厚紙に代用するも妨げなし但し其端末を前面壁の表面に露出せしめざるを要す
『現代本邦築城史』が国デジコレにあるのを発見し、鵜喜鵜喜しながらM27改正「砲台建築仕法通則」を読んでいたら、興味深い記述を発見した。この示方書のなかで平巻きが言及されている。型枠にセメントが付着しないよう厚紙を敷いてから巻立てるのが通則だが、その厚紙の代わりに「平二枚」煉瓦積みを施して巻いても良いとしておる。なるほど、深山砲台の砲側庫や通路隧道部のあの巻きはその意図で行われたものだったのだ。
そうして「前面壁の表面に露出せしめざるを要す」というのが地味に重要だ。第一砲台の砲側庫や通路隧道部のアーチは確かにアーチ端にモルタルを盛って煉瓦を隠している。外から見るとベトンのアーチに見えてしまう。けれども内部は平をこちらに向けた煉瓦巻なのだ。この状況は第一砲台の付属砲台でも同様。
その一方で、第二砲台で唯一残っている砲側庫にはモルタルが塗られていない。そうして確かに内側2枚が平巻になっている。
第2砲台はM25.1.着工、M26.7.竣工で、「砲台建築仕法通則」の改定前に竣工している。第1砲台もM25着工だが6月に始めてM30.8までかかっている(これは確か付属砲台のほうに時間がかかったんじゃなかったけか・・・)。厚紙代わりの平巻が第2砲台で試されて、それ自体はOKとわかったが、表に目地が現れることに不都合が見つかったかして「砲台建築仕法通則」改正の時に付け足されたのだろう。そうして第一砲台の仕上げに前面の塗りが採用されたと。目地が表にあるとその目地を伝って内部に水が染み込むはずだから、それを避けてモルタルで平らにしたのではないか。その延長線上にアーチ裏の溝があるはず。
由良要塞の建設は築城部にとっても施工テストの意味があったように見える。由良要塞にやたらいろいろなアーチがあるのも「砲台建築実験場」としての意図が読み取れる。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11223513/42