nagajisの日不定記。
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「建築学講義録」を下敷きにして書いているようで、妙に似た記述が散見される。掲載図もずいぶん似ている。
諸所に誤謬があってにんともかんともである(それを訂正した書き込みもある)。p.91 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/846021/54 第78図の下段の煉瓦積みは左端の処理指示がおかしい。七五を二枚継いで積まないとそうはならない。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/846021/59 にはモルタルに砂糖を加えると強固になると書いてある。本当だろうか。現在の常識では生コンに砂糖入れると偉いことになるハズなんだが。ただし上記述では「石灰モルタルは二倍近い強度になる」「膠泥モルタルはさほど影響しない」とある。この本のいう石灰モルタルは生石灰に砂と水を混ぜただけのものなので、その場合はたぶん影響ない。「建築学講義録」では生石灰+セメント+砂+水だったはず。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/846206/49
煉瓦は長手方向の異同が大きいため、小口積みにすると必ず裏面に凹凸を生じる。これは先の「土木学」なんかでも書かれてある。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/847597/181
英国煉瓦石の模型(注:型枠)は通常長九吋半乃至十吋幅四吋四分三乃至五吋厚三吋四分一とし窯焼せば十五分一乃至八分一を収縮するを以て市場売品は長八吋四分三幅四吋四分一厚二吋四分三とす壁の外面に用うるものは長さ九吋四分一幅四吋二分一厚二吋四分三とす
英数字にすると、
型枠:9-1/2~10×4-3/4~5×3-1/4 inch
製品:8-3/4×4-1/4~2-3/4 inch
となる。こういうのもっとほしいなあ、日本のでさ。んでこの数値はA history of English brickworkにもThe architectural dictionary(1853)にも『分析試験報文 第1号』(M28)にもない。困ったことである。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/845801/25
手成形 一日約450個 熟練で600個超。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/845801/27
諸外国の煉瓦のサイズ。
英国 8-3/4"×4-3/8"×2-3/4"
蘇格蘭 9-1/2×4-1/2×3-1/2
独逸 9-7/8×4-3/4×2-8/5
墺地利 11-1/2×5-1/2×2-5/8
キュバ 11×5-1/2×2-5/8
南米 12-3/4×6-1/4×2-1/2
蘇格蘭=スコットランド、なんやね。一つ賢くなった。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/845819/39
上の絡みで過去にURLだけ掲げていたのをテキスト化。
英 8-3/4×4-3/8×2-3/4
蘇 9-1/2×4-1/2×3-1/2
独 9-7/8×4-3/4×2-8/5
墺 11-1/2×5-1/2×2-5/8
米 8-1/4×4×8-1/4
英~墺は金井彦三郎編「材料編」と一致する。キューバ、南米がなくなったかわりにアメリカが入る。発行年からゆうたら逆なんだけど。んでこの数値も分析試験報文の値と違う。
http://www.kyudou.org/cgi-bin/tdiary/?date=20190912&
野呂長四郎『近世建築用材料 上巻』(大正4-5)には煉瓦税の結果8-3/4×4-1/4×2-1/2になったとある。これはThe architectural dictionaryの19th London Stockの数値に一致。結局、日本に入ってきた頃には1/4刻みだったちゅうことでしかないのかも知らん。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/846202/40
我国の煉瓦は大抵7.5×3.5×1.9寸。ってどれにも一致せえへんやん。
器械製の乾法と申すは原土を能く乾して粉となしたる上型に入れ器械にて強く押し固める法にして湿法と申す方は手製の様に湿りある粘土を器械に入れ上より強く押せば器械の縁にある孔より帯の様になりて外へ押出さるるを待ち機械仕掛の刃物にて此帯を入用丈に切るものにして帯の大きさは通例煉瓦石の小口の寸法に出来居る故右様にして切りさるものは取りも直さず素地の煉瓦石なり(『建築学講義録』p.257)
ということで、この頃日本には小口方向に押し出すタイプの成形機械が存在したようである。はて、日本煉瓦製造ではどこのを採用したのだろう。もしかしたら堺煉化石が高田商会経由で買い求めたやつだったりするのだろうか。
小口方向に押し出すタイプだとすれば平と長手が平滑になるわけで、これは表面を見れば確実に判断ができる。断面を見てもよい。しかし小口がザラザラになるとアレだな……と思ったら「刃物にて」切断なんだな。ワイヤーよりかは綺麗に切れるのかも知れぬ。
そしてこの文には続きがある。
其他尚お湿法には種々の仕方ありて摂州舞子の浜なる関西煉瓦会社にて用い居る器械などは至極面白く見る丈の価は十分ある故近所迄参られたらば御一覧あれ
行きたくても行けねえんだよ! 説明してくれよ!!
二 素地成形機 独逸国しりっく、あいぜん氏の発明にして千八百五十七年に特許を受く、爾来数回改良を経て今日に至れり、最初は螺旋羽根の軸心を錘直にせしが今は多く水準と成せり、但し我国に渡来せるは重にしゅめるつ江る氏及ぐろっかー氏の製造に係るものなり(『煉瓦要説』p.3)
シュメルツェル氏のが日本煉瓦製造のやつ。ぐろっかーはグローケ Grokeで大阪窯業のやつ。
明治二十年日本煉瓦製造会社の起るや、始めて独逸しゅめるつ江る氏の製造に係る完全なる「シリック、アイゼン」式素地成形機械を輸入し来り驚くべき速力を以て日々数万個の素地を成形する実例を示せしかば爾来各地の有力なる工場は之に倣うて該機械を装置するもの多く(同 p.9)
p.17にはその機械の写真。口金のところはよくわからないが大、切断機のワイヤーの間隔と見比べるとを押し出すやつと思われる。平にギザギザがついて粘着力upっていうのは日本煉瓦製造が言い出しっぺなんだし、やはり平押し出し式なんだろうと思う。 とすると小口押し出し方式は堺煉化石くささが増すわけだ。
Archive.orgで一生懸命ZiegelとかEizenとかSylikとか検索してみたけどヒットしねえんだな。収録は1898年頃のが最も古いらしくち、ょっと届かない。いや、煉瓦要説が出たのが1902なんだからそれでも良かったんか。 んでもやっぱり見つからない。