nagajisの日不定記。
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いろいろな「廃」のジャンル(廃線、廃墟、廃村、etcetc)があるなかで、廃道趣味はどういう位置付けにあるかを考えてみたい。廃道が他より劣ってるとか勝ってるとかいう話をしたいのではなく、廃道趣味が趣味として独立できるか否かみたいなことを考えてみたいということ。なお、ひょっとしたらどこかでもう書いてるかも知れないことだがとりあえずは無視しておく。書いたものを読み返すことはあまりなかったりする。
廃道の楽しみ方は2軸あると思う。「歩いて楽しむこと」と「調べて楽しむこと」。写真に撮って楽しむ・写真を楽しむというのもあるだろうが、どの趣味にもあてはまることだし、必ずしもなければならないものではないと思われるので、とりあえず除外しておく。歩いた結果写真が残るわけでもあるしね。
「歩いて楽しむこと」は他の廃ジャンルにおける「歩いて楽しむ」の占める比重に比べて大きいように思われる。廃道探索は歩くことで一の完結を見る。地図で廃道を見つけるだけでは終わらないだろう。実際に行って、どんなところかを自らの目で確認し、その場の雰囲気を感じることが趣味の基本にある。実際に歩かなければ廃道の本質に至ることができないと思う。もちろん、他人のレポを読むだけの人もあるだろうが、そういう人にはぜひ実地を歩いてみることをおすすめする。
「調べて楽しむ」はこれと直交気味な軸(正確に直交でないのは、現地のさまから調べられることもあるから)。その道がなぜ廃道になったのか、どのような由緒があり、使われ方をして、廃れていったのかを調べる楽しさがある。廃道に残る遺構のあれこれを調べる楽しさがある。個人的にはこの「調べて楽しむ」に廃道趣味の独自性があると思う。
廃道写真は他の廃趣味の写真に比べて地味だ。「道が写ってるだけじゃん」って誰かが言ってたっけ。確かにそうだと思う。よほど絵になる場面か、隧道や橋、切り通し、看板、アスファルト等々の特徴的被写体がないとインパクトに欠ける。フォトジェニックさでは勝負になりにくい。
けれども、廃道は「見えないもの」のほうに価値がある。廃れる前にはこの狭い山道にトラックが走っていた。遡れば荷車を引いた人夫が汗を流し流し登っていった。崖を踏み外して命を落とした者がいたかも知れないし、逸る心地で急病人を運んだ夜があったかも知れない。そういう過去は写真に写せない。あるいは道に込められた思い。村の盛衰をかけた新道工事であった。難所と恐れられた崖道を迂回するための隧道だった。それがさらなる改良で廃道になり、喜びに湧いた人々の思いとともに朽ちて自然に還っていっている。過去から現在を見ることもできるだろう。命を賭して通した新道に因って町や村が発展し今がある。その未来は人々の思い描いた通りだろうか。それとも。
廃道はそういう場である。人の思いが凝り固まった遺跡であり、それを観るところに醍醐味がある。ただの妄想あるいは幻視として見るのではなく、史実に即して見たとき、その道に対する理解が深まるもので、そのためにも「調べる」が必要だと感じる。
そうして、道に対する理解は即ち、日本の過去に対する理解になる。
道はあまりに身近なものであるが故に、そこで起こった出来事は忘れ去られやすい。記録に残ることも稀だ。鉄道を写した古写真や絵葉書は数多くあるけれども、道を写したものはとても少ない(道路隧道の絵葉書なんてレアの最たるものだ)。鉄道だと記録がしっかり&体系的に残っていて、参照する手立てというか調査の方法論というかが確立しているから、幾らでも調べられる利点がある。これは廃線趣味が一歩抜きん出ている。道路の歴史は概略がわかっても細部が知れないことが多い(統計書とか)。突っ込めばあるにはあるが、セオリーがないのがネックになっている。
近代以降の道は特に顧みられていない。比較的最近の出来事であるせいで誰も残そうとはせず、しかし発展する速度は目まぐるしくて、結果、明治〜昭和初期の道の依って来たる所がすっぽり抜け落ちてる。
ここが重要。道の歴史を調べることは難しいが、決して不可能じゃない。やろうと思えば誰にもできる。現地で聞けばまだ記憶している方がいることが多いし、ネットでも多くの一次ソースにアクセスできる。
なんだかずれてきたので無理やり結論。歩くことと調べることは不可分。どちらかが欠けても物足らない。もちろんそうなったからといって下品(げほん)になるというわけじゃない。勿体無いのだ。
この2軸に依るところが(いまの自分の場合は「調べる」が大きなウェイトを占めているが)廃趣味の中における廃道趣味の独自性なんじゃないかと思う。
突き詰めれば同じとこに行く着くのだと思いますが過程(往時の人々の思い(不幸や怨念も含めて)を想像し、想像が事実である証明になるように資料を調べると言う過程)が廃道は他ジャンルとちょっと違うような気がするんですよね…。難しいです