nagajisの日不定記。
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遂に卒業の月に入れり一入名残が感ぜらる。あと二週日にして去るか。
誕生日会 一年の軍歌演習発案訓育学科考査は 宣戦大詔の謹紀なり。劇動休となる。愈〃是も自由になりむず〱す
昨晩消灯後寝台学友志摩と一時間懐旧談をなし心を痛めたり。風加わりて横なぐり雨となる。体操は基本の固癖矯正なり 久しぶりに行い体が柔軟になれり。字号修技。寄書に大書
幼年学校の授業も是から最後の週となる。しっかりやらん。午後は試し斬りを行えり。初めて行いたるも斬味のよいのに驚く。月例身体検査 身長一六五・四 胸囲八六・五 体重五九・五 視力左…一・二 右…一・五 非常に暖し 所感何物もなし。
むさ苦しき許りに暑し。午後の陣中勤務は流石に愉快二週間ぶりに活動したり。即ち我等五名(歩行困難なる者)は対抗部隊となるべく佐々木曹長殿と自転車にて弓削橋を渡り中鶴に行き部隊の渡河(白川)を激撃す。足痛しとはいえ奮斗し幼年校最後の教練を終れり。一七・三〇帰校す。部長殿はじめ方々は帰校のの遅きにご心配せられあり。所感として若しも斯様な渡河をなす時は鏖殺することを得と思う。烏合の衆の如く感ぜらる。学年会延期。自習時間は兵器手入に費せり。久し振りの劇動にて血の廻りよくなれり。
一日々々学科が終了す。そろ〱気の沈む頃ならんか。今日は実に御注意を受くること六回にして精神的に一大檄を加えられたり。
1.服装後実行報告…無断治療
2.毀損届にあたり…若し淡白な誠心あるならばガラスを毀した直後報告に来るべきなり 一片の紙のみにては済まず
3.三年の食堂集合は何だ。号音に間に合うが上級生の礼儀なり(中西生徒監殿)
4.三年は緊張味不足。今だからこそやるべきなり。(部長殿)
5.内務検査に当り…不必要なる鉛筆など持つな。ぜい沢だ。眼薬なければ戦争出来ん奴は軍人やめろと
6.日夕点呼後中西生徒監殿の検査の評及び所感
不満足なり。淡白でない午前中ありし物が検査にない。熊幼を期待して来たのに裏切られたり。清水中学なり。熊幼の伝統断たれたりとて過言ならず
実にびく〱せし日なりしも心改まれり。即ち検査に当りて書物をかくしたるを約五十名揃いて詫に行き生徒監殿より話を承り反って心安く愉快になれり。如何にも間違ったものだらけなりき。
最後の運動班会は有意義に終了す。
〔欄外 林生徒監の印〕
午前中は金曜日授業あり。香川教官殿より若林中尉の話あり。「五十一期歩兵科首席・香港に己〔朱書き「△」?〕人感状、ガ島に戦死す」。その誠に感ず。戦陣訓そのものなりき。授業終りて「仰げば貴し」を歌う。流石に胸にこみ上ぐるを感ず。外出。故森田部長殿宅を訪問し御霊前に礼拝す。しばし茫然と御尊影を見上げいたり。父の同期なりとの感が作用しひしと思う所あり。嗚乎よく〱御不運な方にてありたり。多田少佐殿宅訪問。約一時間にて辞す。
剛健たれ、幼年学校は学科・術科を教える所に非ざるなり。淡白・責任を教うる所なり。
今日昨日の事は実に一年間にも当る修養なり。
近日北陸地方の如く暗き日続き今日は亦雨見る 五時間目は田島少佐殿(四四期・熊幼・ビルマより来らる)の命課布達式あり一年二訓。校長閣下も東京より帰られ今後の心構を話されたり。柔道・体操・牟田口閣下よりの手紙(田島生徒監殿が持ってこらる)
学年切磋会……立つ鳥後を濁さず(日本の精神なり) いろ〱意見もあり
校長閣下曰く「四五期は卒業近くなり寒稽古頃よりボロを出し過ぎた、あと十日しっかりやれ、精神的に劣等生になるな 欲が無く淡白、己の出かした過はかくさぬこと 淡白は誠心を養うの第一歩なり」
あと十日間を生徒心得の具現者たるべく勉めん。
大詔奉戴日 三年生は今日より生れ変った如くきび〱なりぬ。教練は明日査閲の予行なり。種痘行う。天然痘擬患者出づ 一六・三〇―一八・〇〇歴史あり。歴史は実に愉快なりき。此の時間程待遠しき授業はなかりき。精神敵に国体につき得る所大なりき。今日が結言して又今後の態度につき習えり。「仰げば貴し」をやり実際胸のこみ上ぐるを覚ゆ。
校長閣下教練査閲評
一、突撃の気勢不充分。攻撃精神 数を重ねよ
二、不動の姿勢の眼の底力は修養のつめるを表す。
三、密集教練は概可なり 分隊長の指揮まづし 基本動作は良好なるも戦斗教練は不充分。予科に行きては白紙になって根本よりやりなおせ
校長閣下の個人訓育に於て「お前は利己主義と思わるゝ点大なり。独善にては不可。此の点がお前の傷なり。予科へ行ったら此の点を常に心にとめて行動せよ。自然と身についてくるものなり」といわる。今までは薄々自ら思いいたるもかく正しく云われて思い当る点多々あり。今までは何事も要領良く要領にて行えり。最小限の力にて最大限の力を出さんとするものなり。これにては己れは善しとしてもそこに何等誠意が表れず必ず部下はついて来ぬものなり。おそるべし利己主義。己を捨てゝ公につくことに努めん。此の心にて予科へ行きても区隊長殿の懐へ飛び込まんと思う。
〔朱書き大書 松到天而不屈/蘭無人而香〕
一年四月数学にはじまり今日数学に終る。実に今日教授部授業終了す。午後は生徒舎大掃除にて進んで便所を行う。愉快になれリ。汚なしと思わざれば汚なからず。肆業の障害物を練習、中隊発表あり、須智隊になる 二訓より一人 一訓は児島 三訓は生野・松浦・平田・倉田の四名なり。奮斗を覚悟す。夕食後は生徒監殿下士官殿 古河教官殿を招きて最後の訓育班会。愉快に終れり。同期生の団結につき話あり。実に忙しき日なり。心中はたゞ有終の美を飾り予科での決心に燃えるのみなり
昨夜二三・〇〇非常呼集ありてなぐり合い あと二・三回あるを覚悟したるも行われずあてがはずれたり
快晴に恵まれたる誠に佳き 紀元節なり。昨年の今日はガダルカナル撤兵の話を憤激して聞きし日なり。〇九・〇〇より儀式、二訓の写真をとり後肆業予行を行えり。午後休業にて新編の整理を行いぬ。仕事の多きに驚くのみ。
雲に聳ゆる高千穂の……高千穂峯頂上に於て高らかに歌いし事が思い出さる。
生徒監殿訓話は所感数々。気魄不足実行力乏しなりと。卒業式予行。午後は部長殿訓話にて柔道場にて正座して餞の言葉あり。 今上陛下の御聖徳承る。直接宮城参拝を行う感激!! 剣術、夕食は生集にて四十五期生及職員方一同の謝恩会にて会食し覚悟を新たにしたり。部長殿の「突撃に進め」「突っ込め」の号令には真に腹の底からビリッとしたり。実に我々の範たり。校長閣下和歌。「昔の歌を研究せよ」と。教頭殿「印度へ行ったらガンジーによろしく」と。藤本教官殿の「鉢の木」の謡曲児玉教官殿の「小楠公」の吟詠、其の他、我は新に決意を固め予科での奮斗を宣〔?〕む。
〇五・三〇非常呼集ありて剣術・柔道行わる。頭痛の為行わず就寝。製図を書く為一三・〇〇起く。我慢せり。足再び加膿す、実にしゃくにさわるやつかな。予定の外出もなし得ず卒業を前に残念なり。佐牟田入室せり。
九時より全校卒業式予行ついで校長閣下訓話
一、強くなれ…剛健精敢
二、物事を深く考えよ…勅諭
三、脇道にそれるな、平凡は偉大なり。
四、知・情・意の円満な発達
予科に行きてより十分やるべき事項なり。
十六部隊の士官候補生六名来られ昼夕食を会食、教練(複習)の助手をやられ夕食後もゆっくりと予科の話を承れり。五十八期生なり。頼母しく感ぜらる。
棒倒し。奇偶数対抗後三年対一・二年これは五分五分。軍歌演習。
左踵再び化膿し練兵休となる。卒業を前に残念なり。一刻も早くなおらん
〔了〕