nagajisの日不定記。
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この間書いていた、イギリス積みとフランス積みで数が違うという話。
確かに数が違う。フランス積みはイギリス積みに比べて壁の表に現れる煉瓦の数が少なくて済む。長手5個・2段分で比較すると1個しか違わないけれども、一坪あたりなら約40本違うことになる(と『建築工事設計便覧』(大泉竜之輔編、建築書院、1897) には書いてある)。
表に見える煉瓦の数が少なくて済むということは、表積み用の良質な煉瓦が少なくて済むということだ。それだけでも経費削減になるし、色目を揃えやすくもあるだろう。また煉瓦は輸送する時に角を欠いてしまいやすかった。角の欠けていない良質な煉瓦、というとますます限られてしまうのではないか。
初期の煉瓦建築にフランス積みが採用されることが多かったというのは、実はこのへんに起因してたんじゃないか、とか思ったりしてみた。焼成技術が未熟で良質の煉瓦を多数揃えることが難しかったので、表張り用の良質の煉瓦の数を抑えるためにフランス積みを採用したという事例が皆無でもなかったのではないか。
M21中村達太郎『建築学階梯 巻之上』では見た目の良さでフランス積みが採用される的なことを書いている。そのかわり芋目地が出来ルので強度が云々。ほぼ同じ頃の滝大吉の『建築学講義録』ではもっともっと詳しく説いてくれているが枚数節約のことはない(半枡に安い煉瓦を使う輩がいるのでしっかり監督せなあかんとは書いてあるが)。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/945255/81
結構いい洞察じゃね?と思ったりしたのだが、一坪で高々40個しか変わらないのであればそれほど影響しないかもしれない。桁行30尺、梁行20尺の平屋建なら4辺100尺=16.6間、まあ1間高としておいて16.6*40=664個。千個も変わるまい。M30で千個10円内外。
いずれにしても数節約して得するのは請負の側であるだろうから(本来なら高価な煉瓦を使わなければならないところの数を節約できるわけで浮いた分は請負側の儲けになる)、仕方書に指定されていなければ請負の都合で勝手にフランス積みにしちゃったなんてこともあったんじゃないかと想像する。『建築学講義録』を読んでいるとそういう詐術が罷り通っていた時代があったように見えて仕方ない。