nagajisの日不定記。
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新幹線高架のずいぶん高い位置に掲げられていた看板。「新幹線総局」はJR発足の頃に「新幹線鉄道事業本部」になっているそうなので40年以上前の看板であるのだろう。いわゆる色抜けで判じ絵の如くになっている。その判じ絵が判じ得られるようで得られないところに最大の魅力がある。
驚く少年の足元に凧糸が落ちているところから凧揚げをしていて高架に絡まった凧のせいで新幹線のパンタグラフが吹き飛んでしまった様を描写しているように読めるのだが実際そんな事故が起こりえるのかどうか。絡まって吹き飛ぶ前に少年が感電死していそうな気もするし架線に引っ掛かった糸にパンタグラフが絡まるというのもちょっと想像し難い。パンタグラフに接触する前に架線その他で保持されるのではないかとも思う。架線から凧がちょうどぶら下がるような絶妙な引っかかり方をすれば可だが。そんな様々な特殊ケースを考えているうちに糸を引っ掛けたパンタグラフが凧を引っ張ってその揚力でパンタグラフが吹っ飛んでしまう様を想像してしまったりもする。
少年の服に“T”と描かれているのも時代性であろう。たかし君だろうか、それともたろう君だろうか。日系二世のトミー君である可能性も否定できない。いずれにしてもこういう服は最近とんと見なくなった。そもそも少年Hみたようなこの倣いはいつ頃始まりいつ頃終焉を迎えたのであろうか。昭和戦前期に始まったのであれば案外息の長い風習であったことになる。
こんな色抜けになるまで忘れられていたのはこの看板を掲出した位置のせいだと思うーーー高架の桁のところに張られているため普通の生活をしていては決して見つけられないーーーそれを見つけた私は普通の生活をしていないことになるーーーが、凧揚げをしてしまうような少年に警告を与えるには確かに効果的な位置であって、あるいは凧揚げ中にこの看板に気づいて事なきを得た人もあったかも知れない。しかし凧揚げという風習自体も廃れてしまった今となっては無用の掲示物でしかなく歴史の語り部でしかないのがやや哀れである。