nagajisの日不定記。
本日のアクセス数:0|昨日のアクセス数:0
ad
滋賀県を道路隧道特異点たらしめた土木技術者.谷坂隧道や観音坂隧道といった意匠的な道路隧道を設計した人である.伝記や論文がすでにあって,それを参考にして書いた他の4人とは異なり,自分でゼロから調べ上げ,人となりまで突き止めて書いた.
そういう個人的な話は抜きにしても,それなりに価値のある一編だと思っている.村田鶴はノン・エリートの官吏だった人で,そういうレベルの官吏の生き様が明らかになることはまずない.そもそも隧道を設計した人物の名が伝わることからして稀だ.それがここまで明らかになったのだから.
ORJで書いたことに加え,ご子息のKさんにお会いして得た新情報を追加している.これ以上判ることはもうないだろう.
7年前に初めて谷坂隧道を見て以来,彼の経歴を追いかけてきた.その集大成のつもりで書いたせいでずいぶん苦労し,また編集のOさんにも迷惑をかけた.Kさんにお会いし,興奮醒めやらぬ頃に書き始めたのもよくなかっただろう.
最初は他の4人と体裁を変え,自分が話の中心となって,谷坂隧道の遭遇から今日に至るまでを逐一書き上げるような形式にしようと考えた.理由はいろいろある.5人のうちの1人として書くのが忍びないと思うほど肩入れれしていて,何かしら仕掛けを施して印象深くしたいと思ったのが一つ.全くの無名の人物だし,いくら自分が隧道好きだからといって,隧道設計者の話が万人の興味を引くと過信しているわけではない.「かっこいい隧道作ったんよ」「ふーん」で終わらせたくなかったのだ.
ここで書かなければ二度と機会はないだろうという思いもあった.「まず不可能だろう」と言われた判任官クラスの技術系官吏の経歴調査.薄氷を踏む思いで脈絡を繋いだ.行政の壁に阻まれ,迂回して核心に迫った.偶然を3つも4つも重ねて最後まで到達した.そのへんの苦労をぶちまけてやろうと.調査の過程を書くことが,同じようなことをしようという人の参考になるんじゃないかとも思った.
加えて,村田鶴の経歴調査をやった自分が「道と人との関わりの一例」だというメタ構造にしてみたかった(何も自分が偉人の仲間入りしたいからではない.書籍名が「偉人伝」に決まったのは村田の稿を書き終えた頃のことである.止めておいてよかった).偉人の経歴を紹介して「どうだすごいだろう」と主張するだけになってしまうのはつまらないし,そういう役ならもっと適格者がいるだろう.道に興味を持ち,道を訪ねて歩く趣味がどういうものか,具体例を示してみたかった.そういう細工をする前に文章何とかしろという意見は,ごもっともであるが脳が受け付けない.
というわけで,最初はそんな原稿を書いたのだが,書き終える頃に本全体の文字数がオーバーしそうな塩梅であることが判明し,村田鶴原稿7万文字を突っ込むことが不可能になった.そもそも上記の如き小細工をしたところで私が満足するだけだ.必要事項のみ抽出し,他とフォーマットを揃えたら半分以下になった.理解に必要な情報は減らしてないつもりなので,消された半分は個人的な余計事であったこと,即ち7年分の苦労とやらもその程度だとわかり,ずいぶん悄気た.しかしそれによって本の体裁は整ったはずで,村田鶴という人がどんな人であったかを伝えるというそもそもの役目は120%果たせたはず.省略した余計事は,またいつか,どこかで書けばいい.
表紙は吉崎道の切通し.天爵大神指揮のもと,細呂木の人々が掘ったものである(大正末期に改修が加えられているそうなので当時の姿そのものというわけではないと思われる).タイトルや写真選定は全くお任せしたが,出来上がったものにとても得心している.こういうのは変に凝らないほうがいい.
本文Q数(文字のおおきさ)は若干小さく思われるだろう.調子に乗ってあほみたいにたくさん書いたのがいけないのだ.
参考文献は,本文中に併記したものが多いので不要のようにも思われたし,相番振って明示するほどの親切心は起こらなかったが,個人的にはこの手のページがとても参考になったことが多く,入れさせてもらうことにした.紹介した人や道に真に興味を抱いてくれた方は,本文に書かれてあることを信じるよりも,この文献を読んで各自で理解を深めていただいたほうがよい.
プロフィールは「(できれば真面目に)」というご要望を受けて真面目に書いたつもりでいる.ご愛嬌はKINIASと旧道倶樂部が並列なところだけである.
今回JIS男の出番はない.そのかわり1つだけネタを仕込んである.気づいたらニヤッとしていただきたい.
以上,格好悪く徹底的に宣伝した.発行後にやったほうが著者必死だな感が増していいかも知れないと思ったが,ここでぶつくさ書いている限り変わらんだろう.(宣伝するという役も含め)肩の荷が降りてとにかくほっとしている.
「お客様にご予約いただいている以下の商品の発売日が変更されたため、お届け予定日を変更いたしましたのでお知らせいたします」だそうです。
せっかく頑張って宣伝したのに・・・
村田鶴に関してだけで新書ならじゅうぶん1冊になるのはないかと思うのですが、どこかに心ある新書担当編集者はいないんでしょうか?
ORJキャンブックス
そうなんすよね.うちでpdfで出したほうが早い・・・