nagajisの日不定記。
本日のアクセス数:0|昨日のアクセス数:0
ad
1992年から10数年間にわたって繰り広げられた偽書騒動の話。つがるそとさんぐんし、と読むそうである。青森県の旧家から見つかった(とされる)この古文書は通説をひっくり返す大発見が書かれていて(ということになっていて)村史資料編で取り上げられたり歴史マニアが聖典のような扱いをしたりしていたのだけれども、 東奥日報の新聞記者だった著者が取材と裏付けを積み重ねて偽書だと看破した。その一部始終をまとめたものだ。あまり面白かったので3時間ぐらいで読み切ってしまった。
なんとも不思議な、しかし日本では確実に起こり得る話で、似たようなトンデモ学説だったりインチキ商法だったりが現在進行形で進んでいるのをよく見聞きしてるつもりだったのだけれども、このような偽書騒動が(しかもつい最近に)あったことを知らなかった。その頃は日本の正反対にいて勉強漬けだったもんな。
読んでいろいろ思うことがある。1000巻もの偽古文書を偽造し、東北に偽国家をでっちあげた和田氏のこと。生きるために手段を選んでいる暇などないと悟ってしまった人間は何をしでかすかわからないが、一度染めてしまった手の洗い方がわからず、嘘に嘘を重ねて自縛してしまう心理はわからんでもない。途中で「嘘でした」という勇気があればこんなに各方面を困惑させずに済んだだろうが、つきつづけることでプライドが保てるとか、毒を喰らわば皿まで的な発想になりがちだろうとは思う。
東北人が持つというプライドと劣等感が偽書流布の根っこにあるのかも知れないという話が随所で出てくるが、大分生れかつ郷土愛に乏しい私にはそれを正確に推し量ることができない。中央政権から蝦夷だとして迫害された恨みをいまでも根に持っていて、中央に対する反骨精神のようなものがくすぶっているというような表現をされている。そこまで古い恨みを覚えているもんだろうかと思わないでもなく、しかし「外三郡誌」の舞台が古代〜中世に存在したとされる東北政権を中心としているもんだから表現法としてそこらへんから持ってくるのが妥当なんだろう。そういう疎外感があったから奥羽列藩同盟ができ維新の不発につながったと考えてもいい(それが親>子>孫に伝わって今)。
自分はどうだったかなあ。大分県のいち田舎の町村に生まれて、中央に対する劣等感のようなものはなかった気がする。もちろん邪馬台国の位置とか考えたこともない。都会に対するれという感情もない。ともかく何もない平々凡々な田舎がいやで仕方なかった。別の世界に出たいという思いしかなかった。行き先を大阪に定めた理由はとくにない。あちらでは出るなら福岡、それを超えるなら大阪、という漠然としたイメージがあった。それより東の暮らしとか、日本海側の暮らしというのが全くイメージできなくて、そこが想像の行き止まりだった気がする。実際後になって名古屋や東京を目にした時に自分には住めない場所だと実感した。そうそう、出ていく方向ばかりなのだよな。地方にいて中央を見返してやろうというような発想は浮かばなかった。言い方を変えれば覇気がない県民性、全部よだきいで済ませがちな県民性なのかも知れない。
ひとたび嘘が広まってしまうと、それを訂正することが難しいということ。思い違いとか5時脱字なら可愛いもので、訂正される余地もあるかもしれないが、思想とか発想法とかは根絶されることはない。第三者が面白がって別の文脈で使ってみたりするからなおさら。陰謀論とか水の伝言とかすごく嫌なのだけれどもなくなることはないだろう。廃道を興味本位プギャー本位でしか見れない連中が一定数居続けてるようなものだ。
「外三郡誌」が世に出たのは1970年代なのだが、専門家が見れば明らかにニセモノだとわかるような稚拙な内容だったのに、それが町村の刊行物になったころから話がおかしくなる。最初にそれを防げなかった理由もあまりに日本的で「ファ〜〜〜」と思う。内容が怪しく思えたけれどもとりあえず書いて世に問うことにしたとか、第三者の検証を待つために、なんて、まるで同人誌じゃないか。と思った反面、そうやって逃げ続けているnagajisのスタンスもどうよ?と思わされた。そういうのは京味を持った人間が責任持って最後までやらなきゃいけないのよな。批評も誤字指摘もしてもらえないnagajisのような場合は特にな。
論争とはいうけれども、自分の発行している会誌・雑誌のなかで相手を避難しているだけに見えてしまう。書いて反論することほど無益で疲れることはない。自説に固執して時間をかけて書けばいくらでも反論のしようがあるから、結局はただの喧嘩で終わりがちだ。それを面倒くさく思わない、天性の書き馬鹿のほうが勝つという不毛地帯なんではなかろうか。
他にもいろいろ思い当たる節があったので折を見てかく。
5時、京味を指摘してほしいのかな?
当たり。さすがです。