nagajisの日不定記。
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まったくどうでもよい話題。例えば昭和11年、鉄道技術社が発行した「保線ポケット・ブック」など、保線工夫向けに作られたハンドブックにレール標記の解説がある。保線の仕事をしていると「いつどこで作られたレールなのか」がわかっていたほうが捗っただろうから、まあ必須な情報ではあっただろうと思う。
けれどもこれ、あちこちに間違いがある。例えばCammellの標記。
CAMMEIL.SHEFILD.70UGHENEDXE EL.1804.9.I.K.J
手書き文字なので一瞬自分の読み間違えかと思ってしまったが、そんなことはない。確かにこの通りに書かれてある。
昭和12年鉄道時報編輯局編纂「最新工学宝典」にも全く同じものが載っていて、やはり同様の間違いをしている。さすがに「eV&CoLo」を「BV&CoLo」に修正するくらいはされているが(それでもCoLoなのだが)。
さらには戦後も戦後、昭和60年に鉄道現業社が発行した「保線ポケット事典」第8版にも同様の項があって同様の間違いをしている。写植文字に変わるけれどもやっぱり
CAMMEIL.SHEFILD.70UGHENEDXE EL.1813. I.K.J
だったりする。恐ろしいことである。
国立国会図書館データ送信で得られる、芹沢茂作著「鉄道分岐器類詳説 上巻」(常磐書房、S12)にも同様の図説があるのだが、これは大変正確だ。文字も写植で
CAMMELL.SHEFFIELD.TOUGHENED.STEEL.1884.9.I.R.J.
と書いてある(ただし2本めの銘は「CAMMEIS」になってるな)。他のメーカーの銘は総じて完璧に近い。
これより前、昭和10年に保線工学会が作成した「保線作業必携便覧」がこの手の標記解説の走りのようだ。ここには「鉄道分岐器類詳説」にあるものよりもメーカー数は少なく、手描きでもあるが標記は略正確である。なおかつそこに書かれている文言は「鐡道分岐器詳説」にも「保線ポケット・ブック」等にもほとんど無フィルターで使用されている。
さらに調べてみると「最新工学宝典」の昭和7年版にも標記解説はあるのだった。文字のみの説明で掲載数も少ないが精度はかなり高い。ここで合っていながらなぜS11版でおかしくなるのか。
以上のような状況から、「最新工学宝典」昭和7年版の記述を振出しとして「保線作業必携便覧」が作られ、その記述を拡充する形で「鉄道分岐器類詳説」図が作られ、その図の手書きコピペ劣化版がハンドブックに掲載され(「最新工学宝典」にもバックトラック(バッドトラック?)され)、そのまんま、昭和も末頃まで間違ったまま延々流用され続けたらしい(S11「保線ポケット・ブック」も「鉄道分岐器類詳説」をパクったくさい。載っている銘柄もその製造年も同じなので。発行年が齟齬するのは謎だけれども。もう少し前に正確な記述の載った何かがあったのかも知れぬ。まさか「工政」のを引用したわけでもあるまいしなあ)。
(以上、Tさんに頂いた資料などから試みた追跡)
サイゼリ屋に篭ってforgeするつもりだったのだけれども、なんだこりゃ、こっからどう錬ればいいのだと呆れるばかり。所詮屑は屑、スラグの塊であって、いくら叩いたって鉄にはならない。
一言、恐れ入りました。<br>追、これらの資料はレールに記されている記号や文字の呼び方が、刻印、マーク、記号、標記などいろいろあるようなので文献などでの呼称を調べることが目的でした。それにしても読み取りや精査のすごさに感心しております。<br>[げ]錬鉄作業の意味がつかめないよ・・・・
個人的には何でもいいのかなあと思っていたりします(ここみたいな適当なトコロでは特に)。ことばは世につれ時につれ変わるものですし。<br>[げ] 錬鉄作業、ああそうか、月末締め切りの投稿原稿をサイゼリヤで推敲してたっていう話です。先に書き上げていた草稿を仕上げるつもりだったんですが、見直してみたら修正しようのない駄文だったので呆れちまったいという話でございます。