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2011-09-01 [長年日記]

[] 明治17年:道路の制を更定するの議 by 有朋

アジ歴を徘徊していて面白い資料を見つけた.「要するに」はあとで書く.原文旧仮名漢字をかな新字に改め適宜句読点を入れた.

道路の制を更定するの議

道路の制は土木事務の沿革に従て維新以来数回の変遷を経歴したり.則ち明治六年大蔵省に於て道路規則を発布して,道路に三等の級を立て,廃藩置県前の旧慣を斟酌し,其等級に応じて処弁の定規を設け,既往五ケ年の工費を平算して官給の額を定め,八年地方官会議を以て国県里三道の制を定め,各道に三等の級を設たるも,経費は仍(な)お旧慣に依らしめたり.然り而め此時に至る迄管理上の事は全く政府の担任に係りたり.十一年府県会の開設,地方税規則制定の時に際し,管理及び経費支弁のこと共に著(つ)き変更を生じたり.則ち地方税支弁の費目中土木費の一項を置き,地方利害の大小に因て地方税及び協議費負担の別を定め,其区別は一に府県会の議決に委ね,其管理の事に至るまで併(あわせ)て地方に任じ,是より自ら維新以前の旧慣を破り,往々実際の不便あるを見る.然れども当時官給費額は仍お旧慣に依て支給したるを以て,幾分か地方の負担を補助したりしが,十三年第四十八号公布を以て土木費官給の事を廃止し,道路費悉皆地方の負担に帰したり.爰(ここ)に至て管理経費共に全く地方に放任し,政府は直接に道路修築の事に関預することなきに至れり.蓋(けだし)当時財政の急務よりして,従来の慣例に依り,地方税と連帯支弁に係りしものを以て地方税支弁に委ねたるに止り,管理の事に至るまで挙げて地方に放任するの廟議にはあらざりしなるべしと雖も,方今事実上に於ては全く放任の状を見るに至れり.

抑(そもそも),道路経理の良否は国家の盛衰に至切の関係を有し,運輸の便未だ洽(あま)ねからず,且軍備の拡張に急なるに方[於?]ては,其制を確定し,修繕周到の方法を索むるを以て今日の要務なりとす.加之,国県里三道の制は八年以前より既に制定せられたれば,其種類等級に応じて経費支弁の法を設け,首尾相全うせざるべからず.今や財政大整頓の緒に就き,地方政務の如きも較々(やや)着実に趣き,政府に於て漸次行政の基礎を鞏(かた)うし,其改良を計るの時機に任(あた)り,此際宜く財政上便宜の処分に係る一時の令を更(あらた)め,永遠の制を定め,以て内政改良の一端と為すべきなり.

近時交通運輸に車馬を用うるの繁多なるに至りしも,全国を通観すれば,修路の功は却て昔日に及ばざるもの少なからず.蓋,全国に貫通せる国道の修繕を以て,一府県地方税の支弁に帰し,管理の事を併て地方官に委任したると,十四年度財政更革の際,百万円余の巨額を以て地方の負担に属したるより,民力に堪え難きものあるとに因る.而て十三年度地方税より支弁せし国道修繕費の現額は十万八千二百六十五円,協議費より支弁せしもの四万六千五百七十四円,外に橋梁費若干,十四年度地方税協議費篤志寄付金の三種より支弁せしもの合計五十六万九千五百七なり.而るに既に行政の事務を中央と地方とに分ち,随(したがい)て経済を異にする以上,国道の如き全国の利害に関するものの経費を以て地方の負担に属するときは,情勢止むを得ず,管理の事に至るまで自ら地方に帰し,甲乙相接する所の府県にして道路の修繕互に異同ありて,全国を連絡せる国道の体裁に適わざるの実況あり.名実共に具当を得ざるなり.是に因て国道は悉皆政府の管理する所と為し,以て其修築の体裁をして全道一轍に出でしめ,傍ら工事の改良を計らんとす.

国道を政府の管理に属するに付ては,夫の国県里三道の制を定められたる旨趣を体し,県道は府県の管理に属し,其経費は地方税を以て支弁し,里道は町村若くは郡区の管理に属し,其経費は協議費を以て支弁すべきものと制度を定められんことを冀望す.

国道の総里数千九百四十里余,此平積千四百五十万八千九百六十四坪余,此修繕費一里に付千六百七十八円三十二銭即ち一坪に付十九銭四厘と見積り,其額二百八十一万四千七百三十九円一銭六厘,毎年全道の一半を修繕するものとすれば,其額百四十万七千三百六十九円五十銭八厘,其三分一を修繕するものとすれば其額九十三万八千二百四十六円三十三銭八厘強なり.外に治道,橋梁費の目途高を二十万円とす.

右の費額は国道全線の経費悉皆官給の目的を以て計算したるものなれども,従来の旧慣に依り,若しくは近年地方税改定以来の例規に依て,地方に於て実際支弁し来りたる費額にして,特に困難の状なきものは今遽(すみやか)に之を廃止するを要せず.道路掃除丁場と唱うるもの等,幸に猶お全廃に至らざる由.此等は詳細実地の調査を遂げ,或は旧慣に依て力役を課徴するか,又は沽計して分担せしむるの法を索(もと)むべし.依て此際は右一半若くは三分一と,外に橋梁費目処高の二分の一十万円,若くは三分の一六万六千六百円余を支給し,以て国道管理の実権を占めんことを要す.尤従来道路橋梁補助費として別途に官費支出せしもの,十五年度十八万五千七百三十円,十六年度二十四万四千六百六十二円(十七年度に於て稟議の積現今調査中の分凡三十余万円あり)あり.右国道管理の制を定めらるるときは総て此支出を廃止し,実地国道修繕の緩急に依り,其の費額に余裕を生ずることあらば,之を以て幾分か新道の開削を助成し,且国道の開削にして地方の発起に係るものあらば之を補助することとせば,政府に於ては従来地方の請求に因て補助金を給与し,往々出願の取捨に苦むが如きことなく,地方に於ては国道修繕の負担軽きを得て其余力を県道以下の修繕改良に施し,以て交通運輸の便漸く開進を期すべし.

国道を管理するに付ては,土木工師の任用職権を完むる等,其主務局たる土木官僚の組織に多少の改正を要すべしと雖も,今遽に其運びに至り難きの事情なきにあらず.且,創始の際なるを以て,地方官の意見等も篤(とく)と聞得たる後,猶お改正の案を呈すべし.依て此際先別紙の通地方官へ内達せられ,厚く右趣旨を論し,土木局員と協議の上地方官をして管理せしめんとす.

又治水の事業たる,方今土木の大要部分に居り,多少の沿革を経て全国屈指の十四大河は既に直轄に帰し,其工費十三年度より十五年度に至る迄は二十万円乃至二十八万円なりしも,本年度に於ては四十七万三千三百十一円の巨額に達せり.その工事大に改良進歩の緒に就きたりと雖も,猶お漸次直轄の河川を増加するか,若くは地方と連帯経理の法を設け,其管理の制を更定し,一層水利土工の改良を計るも亦内治上至要のことたり.港湾修築事業の如きも,善く其緩急を査定し,漸次着手の順序方法を確定するは,経済上寔(まこと)に緊要のこととす.不日更に現況を具し,併せて改良の方案を上陳すべし.道路の制度を更定するに更定するに至切の関係あるを以て,特に之を附陳す.

以上具陳する所幸に御採聴を蒙らば,十七年度より実施候様相成度,謹(つつしん)で仰御採択候也.

明治十七年二月 内務卿 山形有朋

太政大臣 三条実美殿

要するに,の前に前提を書いておく.明治6年に道路等級制,明治8年に国県里道制ができた頃は国が道路の改修費用を出すことになっていた(官費下渡金).それが嵩んで重荷になってきた明治13年,官費下渡金を廃止して道路にかかる費用を地方税負担,すなわち府県が負担するように改めた.

引用した山県の上申は,それを改めるべきだというもの.国が国道の改修費を継続的に出すことで,国の国道に対する権限を強化し,国道網の整備をするべきだ,ということだ.

M13以前は国が道路の監督権限(国県道を定めたり何とかしたり)を有し,かつ¥を出していて,一方で工事をしたり改修したりといった管理権限は府県にあった.「国に代わって府県が道路を維持管理する」という関係が成り立っていた.しかしそれが,財布の紐まで地方に委ねてしまったことで,道路行政を地方に丸投げする格好になっている.国の幹線たるべき国道の改修が疎かになっている.このままじゃいかん,国が積極的に国道改修に関わるべきだ,と山県は言っている.

こういう上申をしていたことは聞いたことがあるようなないようなだし,要は旧態に戻せということなんだが,結構先見の明があったんじゃないかと思う.大正8年の旧道路法では道路管理権(道路管理者)を明確に定め,道路の体系的な管理を可能にしたけれども,国が道路管理者になることはなかった(国道,府県道の管理者は府県知事).国(国務大臣)が管理者となり国道の建設を行うようになったのは昭和27年の新道路法からのこと.その結果としてようやく四通八達の国道網が出来上がった.

山県の上申は大蔵卿・松方正義の“つっこみ”が入っている.

地方官に御内達案

道路の修繕を善くし其改良を図るは方今の急務に有之候に付,来る十七年度以降国道修繕費総額の幾分は官費を以て補助可致儀も可有之に付,詳細の儀は内務卿の指揮を受け,国道管理の方法一層行届候様可致,此旨内達候事.

別冊内務卿上請之趣審案候処,実際不得止筋とは相考候得共,来十七年度予算之儀は既に其概計上に於て無慮四百六十万余円之不足を生じ候に付,歳入出減削支弁之方法目下苦慮計画中に有之,同年度に於ては支出之目的相立□中候間,内達並実際に施設之緩急等者,尚当省協議之上追而申出候様,御指揮有之度,此段及副申候也

明治十七年三月十四日 大蔵卿松方正義

太政大臣 三条実美殿

要するに,山県案には賛成するけれども,十七年度の支出はすでに赤字超過になっているので難しい,工事する箇所や費用等はうち(大蔵省)と相談して決めてくれ,ということ.

そうして三条実美の回答はこう.

上請之趣聞届状尤大蔵卿上申之趣有之に付金額支出の目処並に一般施設の順序等は詳細取調更に可伺出其迄の内実際之儀は右の目的に拠り臨時支出の金額等大蔵卿へ協議の上適宜御取計事

但金額前途支出の儀は其都度伺出候儀と心得べし

明治十七年三月十五日

一応は山県案を容れている格好.大蔵省と相談の上,詳細を決めて再度問え,ということになっている.

でも,その後はそうなっていない.先述の通り道路の維持費用は府県が負担し続けた.翌年に内閣制が始まったことで話がポシャったということだろうか? それともこれが国庫補助の制度につながっていったのか?

あ,原文の資料番号はA03022908500.「道路ノ制更定ノ件」.アジ歴は資料へのリンクが取れないから困る(AA略

[ph.][] 大木

画像の説明今更感たっぷりな一枚.旧戸倉隧道の西口坑口の上にこんな大木が育っていることに,この間気づいた.コンクリートの塊から白飛びしつつある路面までの高さと比べてみていただきたい.相当な巨木である.

斜面から斜めに突き出した坑門工の上だから,隧道以前からあったものではあり得ない.隧道が作られた時に植えられたか,その後に実生したものだと思われる(石垣が巡らされてあるところを見ると態々植えたものである可能性が高い.ただの土留め石垣かも知らんが,ご神木を護る玉垣と捉えたほうが色々捗る気がする).

こんな大きなものを載せてよくもまあ壊れないものだと思う.世界樹よろしく隧道を包み込んで,却って崩壊から守っているのかも知れない.

[独言][web] なんや

こんな便利なんができてたんか>Googlemaps static

本日のツッコミ(全4件) [ツッコミを入れる]
_ ocoze@三重 (2011-09-01 12:22)

上に来たねぇ〜♪ところで軍用トンネルの記事はORJの何号にあるのでしょうかぁ?

_ nagajis (2011-09-01 20:10)

ORJ BEST!で無料公開中です。検索も便利ですよ。

_ ocoze@三重 (2011-09-01 22:24)

「自分で探せよ」を遠まわしに言うと「検索も便利ですよ」となるなWW それもよかろう。うんうん,ネット人の常識じゃでな。<br><br>さて,29号に本体があるのじゃな。20号台と50号台はまだ買ってないんでとりあえずベストを読ませて頂いた。どの巻もボリュームがあるので,熊野・大台関連の巻以外は,落としたままでまだ数巻しか読み進んでいない。<br><br>学校で習うのは権力闘争の歴史で,こういった歴史は殆ど含まないので興味が全くなかった,ゆえに歴史には全く弱いのである。よってn氏の記事は,ヒストリーチャンネル同様に,とても為になる。世辞抜きに魅せられるレポートだ。現地調査も欠かせぬパーツだが,謎解きの方が面白い。<br><br>と褒めておきますので,あんまり頑張らないで自身が一番楽しんでねぇ〜。わしも次の期限に向けて創作せねば...。イマイチ気が乗らんのじゃが...  カキコ...長い...過ぎ

_ nagajis (2011-09-02 22:07)

いやー,ツッコミは見逃しちゃうことが多くて・・・ここで尋ねられるよりも検索のほうがはやいですよーということです.他意はございませぬ.<br>私の記事をお読み下さりありがとうございます!


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