nagajisの日不定記。
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JR森ノ宮駅横の商店街に掲げられている看板。看板の文字ではなく、そこに添えられた落書きに反応した。
御クルマ様だけが「神」
糞チャリ共は賤民
日本交通差別行政
なかなか奥の深い落書きである。車を神とし自転車を賤民と見做すような発想はそう簡単に出てくるものでない。「賤民」なる語の選択もなかなか痛烈。彼の理論上ベサツされる側に立たされることになる私などは思わず知らずのうちに憤ってしまった。なんでそんな酷い扱いされなあかんねん、と。そして誰もが使い書けない人もないだろうという「車」の文字をわざわざ開いて書いてあるのがミソだ。これは計算の上で、であると断言しよう。なぜならその次の「チャリ」に対比させるためだ。「御クルマ様」/[糞チャリ共」という文字韻を踏んでいるのだ。
そのうしろ、神にだけ鍵括弧がついているのは対称性の放棄だが、その非対称がかえって前段落の異様さを印象深くすることに成功している。
御クルマ様だけが「神」
糞チャリ共は「賤民」
としてみると、その正確無比な対称性によって印象が希薄になってしまうのが実験できるだろう。
もっとも興味を持ったのは最後の一文だ。この言葉を記した団体の名であるはずなのだが、「日本交通差別行政」という違和感ありまくりな団体名で、読んだ時にズッコケそうになるのだがしかし、「行政」としたことによって、この落書きが看板それ自体への皮肉であることがわかるのだ。放置自転車は危険だから随時撤去すると宣言する---しかし路駐自動車については見て見ぬふりをする---看板、そしてそれを設置した行政への皮肉なのである。この看板の設置者が「車は神」「チャリは賤民」と宣っている姿を想像してみるとよい。
イブだろうがなんだろうがお構いなしに公文書館へゆく。近デジに収録されていない登録商標大全を桃獲得するためである。
結果は予想通り芳しくなかった。第19集が大正11年前半の出願に係る商標をまとめたものであり、煉瓦製造業が斜陽に照らされつつある真っ最中のことであるから、そもそも煉瓦関係の商標出願件数からして少ないのだ。
僅かな収穫の1。三石耐火煉瓦が大正11年に出願した商標。この刻印が押された耐火煉瓦は現に存在していて舞鶴赤れんが博物館に収蔵されている。確かこの頃外国から飛行船が来日して人々の耳目を集めた。それにあやかった商標であるらしい。
2.出願者の北村源平は貞徳舎の初代社長。何か引っかかる名前だと思ったよ。ただしこの商標のとおりの刻印は見つかっていない。TTTとかTTRとか
煉瓦関係は第14類に分類されていて、他にも陶器や七宝焼やらがこの類に含まれる。なので陶器や七宝焼や瓦の製造業者が自社製品の商標登録のついでに煉瓦も含めて出願し受理されているケースが多い。例えばこの商標。一応「及煉瓦」ということになっているけれども、大正末期に深日村に煉瓦製造工場はなかった。おそらく瓦や陶器のために取得したものだろう。
そのほかには、大会社が自社屋号を商標ゴロから守るために類見境なく取得しているケースも多い。明治屋のトライフォースとか仁丹の将軍マークとか三井物産の井桁+三とかが煉瓦用に取得されてある。
結局のところ、煉瓦製造業華やかなりし頃の明治時代の商標は第一集を見れば事足りたのだった。他に役立ったのは関野さんカッケーくらい。あとは岸煉と大阪窯業の商標登録がある程度。榊原鶴吉の三本線はかえって話をややこしくしただけだ。