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2019-09-05 [長年日記]

[煉瓦][] イギリスの煉瓦製造技術の歴史

https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijax/361/0/361_KJ00004080490/_pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijax/362/0/362_KJ00004080515/_pdf

佐藤彰「建築材料生産,加工の機械化―煉瓦(上・下) 英国近代建築産業成立期の生産技術 1−3,4」(日本建築学会計画系論文報告集 第361号(昭和61年3月)、第362号(昭和61年4月))。こういうのが家で読めるのはとてもありがたいことである。

[][煉瓦] 煉瓦サイズ(大高前後)

しつこいようだが煉瓦サイズについて考え続けている。明治39年の大高表。

名称長手(mm)小口(mm)厚(mm)
並形7寸4分
(224.2mm)
3寸5分
(106.1mm)
1寸7分5厘
(53.0mm)
東京形7寸5分
(227.3mm)
3寸6分
(109.1mm)
2寸
(60.6mm)
作業局形7寸5分
(227.3mm)
3寸6分
(109.1mm)
1寸8分5厘
(56.1mm)
山陽新形7寸2分
(218.2mm)
3寸4分5厘
(104.5mm)
1寸7分
(51.5mm)
山陽形7寸5分
(227.3mm)
3寸5分5厘
(107.6mm)
2寸3分
(69.7mm)

これと近デジで見つかる煉瓦サイズの記述を比較。編著者や出版社の所在地も確認の助。

■Rankine著、水野行敏訳『蘭均氏土木学 上・下』〔文部省・明治13年〕

たぶん最初期の洋学土木教科書。さすがにここには東京型も並型もない。

巻三 畳石
第二款 人工石を論ず
調理せる濡粘土を型に入れ煉化石の形となす其大さは焼過煉化石に望む者より縦横厚共に十分の一若は十二分の一大なるべし是れ焼過煉化石収縮の尋常比例なり

(略) 尋常の型は長十寸広五寸厚三寸内外なれども特別の者に至ては大に変化あり

■中村達太郎〔東京帝国大学教授〕編『建築学階梯 巻之上』(米倉屋書店〔東京芝区〕、明21)

土地により多少差異ありと雖も通常長七寸五分巾三寸六分厚さ二寸

→東京型に一致。

■田辺朔郎『袖珍公式工師必携 初編』(〔京都東洞院三条上ル町〕村上勘兵衛等、明21)

実地で働く人のための書。実務的。

通常の形は長七寸三分巾三寸五分五厘厚一寸八分より長七寸八分巾三寸八分厚二寸迄とす

→実務的なので焼成誤差を含めて述べている。

■千葉末吉編『建築学提要』(淵点堂〔広島県広島市〕、明24.7)

あ、広島だから讃岐煉瓦が例示されてるのか。

通常煉瓦の寸法は長七寸六分内外巾三寸六分内外厚さ二寸内外とす

→東京型より長が長い。

■宮城県内務部『土工筌蹄』(明28.5)

宮城県内務部で使用の仕様書的書籍。

○煉瓦石壁積り方
(略)
右入用内訳表
(煉瓦 長七寸五分、寸径三寸六分、一寸八分)

→東京型より厚2分うすい。

巻頭言曰く「欄均氏土木額模氏掌中工学田邊氏工師必携等に就て簡易の公式を選み交ゆるに本県実験の設計式を以てし遂に本書を成せり(略)材料の長短細太職工人夫の懸り高等に至りては悉く公式に当れりと云うを得ずと雖ども各様の設計式に就て実地の状況を対照し彼定参酌を加え(略)

■中村達太郎校閲、千葉温也〔臨時陸軍建築部技師〕編纂『建築学提要』(建築書院〔東京市京橋区〕、明29.11)

目今唱うるところの煉瓦の名称は左の如し
名称
七寸五分三寸六分二寸三分山陽形
七寸五分三寸六分二寸東京形
七寸五分三寸六分一寸八分大坂形

どういうことだってばよ・・・

■工学士瀧大吉・野村一郎校閲、大泉竜之輔編『建築工事設計便覧』(建築書院、明30.8)

あー、宮城のは焼過使用を前提にしてるのかも・・・

瀧大吉:明治時代に陸軍省を中心に活躍した建築家。野村一郎:大阪と台湾、朝鮮を拠点に、旧台湾総督官邸(現台北賓館)、旧朝鮮総督府庁舎などの設計を手がけた。 

煉瓦石通常の大さは長七寸五分巾三寸六分厚二寸なれども焼過ぎ抔は長七寸二分巾三寸四分厚一寸八分までは縮むものなり

→東京型で縮むことも述べる。

■工学博士安達辰次郎閲・土木工師竹貫直次著『応用土木工学』(博文館〔東京日本橋〕、明31.9)

安達辰次郎:http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/PERSON/A/adachi_ta.html 竹貫直次:私塾攻玉舎に学び陸軍測量技師を経て小説家江見水蔭に師事。んー・・・。

普通煉瓦の大さは、長7寸3、巾3寸5、厚1寸9にして、一個の目方は、五ないし七封度なり。

どういうことだってばよ!

以下大高以降。

■坂本雄造〔米国理学士〕著『建築学』(修学堂書店〔東京市神田区表神保町七番地〕新撰百科全書第11編、明治41.8)

煉瓦石は、我邦に於いては、其の大いさ、未だ一定の標準なしといえども、普通使用するところの大いさは、約其の長さ七寸五分、幅三寸五分、厚さ一寸八分に近し、然れども、その原料なる土質の如何に依りて、不同多きものとす。

■増田淳著『土木工学』材料施行編,構造設計編(成美堂〔東京市日本橋区通三丁目10番地〕明治41.11(41.3著))

かのJiun Masuda著。耕地整理講習会の講義内容に加筆訂正して出版。その後渡米してアメリカン・ブリッジに入社する。

煉瓦の形状は方形で其長さ七寸五分幅三寸六分厚さは大阪地方では一寸八分東京地方では二寸又二寸三分の所がある

■『東京勧業博覧会審査報告. 巻2』(明41.12)

各工場の煉瓦の実測寸法あり。二寸越えが大半。つーかバラバラ。

■戸倉英一郎『土木設計便覧』(修学堂 工学便覧叢書第3編、明42.5)

○煉瓦の大いさ
海外殊に欧米各国にありては、規定の下に一定せりといえども、我邦の如きは、否らず。其の大小の種類を挙ぐるときは、左の如し。
縦 横 厚
七寸二分 三寸三分 一寸九分
七寸四分 三寸六分 一寸九分
七寸五分 三寸七分 一寸八分

■神門久太郎『実用製図学』(建築書院、明42.4)

煉瓦の大さは長さ七寸五分、幅さ三寸七分五厘(長さの中分)厚さ二寸を標準とすれども、製造所によりて多少異なれり、例令ば東京形にありては長さ七寸五分幅さ三寸六分、厚さ二寸なれども、大阪形に至りては厚さ一寸七分なり、又山陽形と称して其厚さ二寸五分なるもあり。

■井上繁次郎編『建築師要覧』(博文館、明43.1)

煉瓦大さ 煉瓦石は普通長七寸五分幅三寸六分厚二寸なれど焼過にありては長七寸二三分幅三寸五分厚一寸九分とす又関西形と称し厚さ一寸八分のものあり

■太田義三郎編『工業材料便覧』(修学堂 工学便覧叢書第8編、明43.1)

一 日本製の煉瓦は、長さ七寸五分、幅三寸五分、厚さ一寸九分あり。

同じ叢書の別の巻で違うことゆーなー!

■本橋弥八編『工業通覧』(須原屋書店、明44.4)

寸法 煉瓦の寸法は地方により一定せず、則ち
東京型、長さ七寸五分、幅三寸六分、厚さ二寸
大坂型、長さ七寸五分、幅三寸六分、厚さ一寸七分
山陽型、長さ七寸五分、幅三寸六分、厚さ二寸五分

厚さだけの違いのパターン。

■天野郁介編『実用建築材料編』(建築書院、大正1)

サイズに触れてない。

鶴見一之, 草間偉瑳武著『土木施工法』(丸善,明45.1)

図示。長七寸五分、幅三寸六分で、厚は東京形二寸、大阪形一寸七分、山陽形一寸五分(!)

■長崎敏音著『実用土木材料学』(工業雑誌社、大正1)

煉瓦の寸法は土地により小差ありと雖も之れを大別せば第四十九表の如くなる。

第四十九表 煉瓦の寸法
種類寸法
長(寸)幅(寸)厚(寸)
普通型7.53.51.8
東京型7.53.62.0
大阪形並7.53.61.8
山陽形7.53.62.3
東京に於て普通用いらるるもの7.23.51.85
焼過物7.23.41.8

やーめーてーくーれー。

結論:ほとんど一致するものがない。東京型がかろうじて一致する傾向にあるかという程度。五厘の差は無視されるのが常っぽい。

結局の所、大高庄右衛門のあの表が特異なんではないか。種々サイズがあることを強調するために5厘差を書いている可能性も微粒子レベルどころではない可能性で存在。

東京型・大阪型の違いは長や幅ではなく厚さにあったと見るべきだろう。それ以外は一致してたりしなかったりする。平均でも6mm差は大きい。積み段数に関わってくるし。


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