nagajisの日不定記。
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前回書いたホフマン窯の件、本文のほうにもっと重要なことが書かれてあった。Hoffmanの特許は確かに1858年に取得されているのだが、当初は副煙道(Hot-air flues)がなく、それを発明したのは1870年のことなのだそうだ。だから1875年作成の図には副煙道が描かれているのだ。
冷却フェーズの房から副煙道を介し燃焼中の房をバイパスしてその先の乾燥フェーズの房に熱い空気を送る。燃焼中の房から煙を引っ張ってこないのは、煙に含まれる成分の影響で発色が悪くなるからだと説明されていた。なるほどな。あとHoffmanが輪窯を考案した時から房の仕切りは紙だったようである。
1875年というと日本では明治8年。近代的な煉瓦製造が始まって間もない頃。それから3~5年後に特許が切れると考えると&1877から特許制度が変わることを考えると、明治21年の農商務省分析報文に副煙道つきのホ窯が(特許云々の話なしに)紹介されていても不思議ではない。ただ分析報文では副煙道の使い方が正しく説明されていないハズ。1875年のホ窯の図はダンパーで開閉するよう描かれておる。投炭坑を流用したりしない。
そんなわけでちゃんと読み込めてないことがバレたので改めて読み直してみた。根本的な話としてこの本はイギリスの煉瓦製造を概観している。煉瓦造りにまつわる俗語もイギリス流。例えば
煉瓦のこの凹みを"frog"という。蛙。Websterにもない用法(?)。わかるようなわからんような……丸っこい凹みは蛙の腹を連想させないわけでもないけどなあ、凹凸逆だしなあ。ちなみに米英では手成形煉瓦(pallet moulding)でもこの凹みをつけた。17世紀末ごろから採用されるようになったものらしく、イギリス規格(British Standards, BS)でも"frogged brick"の規格が定められているそうである。
素地煉瓦は"clot"とか"warp"とか呼んだ。乾燥時の煉瓦積みは"hack"で同じ。煉瓦積みの壁を"kick"と呼ぶらしいのは面白い。ちなみに"kick the brick"という成句もあって、これは左記kickではなく蹴る方のkick、「自爆行為」あるいは「非常な苦痛を伴うもの」のような意味があるそーだ。ついでにいうとKICK brickなる子供用玩具もある。要するに柔らかい煉瓦形の直方体。積んで遊ぶ。