nagajisの日不定記。
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湖北には音がなかった。機械の唸る音も無粋なエンジン音も室外機の音も無い。それにふと気づいて耳を澄ませていると、遠くで微かに鳴くセミの声。鳶のピーヒョロロ。チチチッチチッと鳴き渡る名称不明の鳥たちのさざめき。葉ずれの音はしなかった、そもそも風が吹いていないから。そういった音はあるのだが、無音といっていいほどに静かだった。
この静寂を経験するために来たのかも知れないと思った。自然の音だけの環境に身を置きたくて旅をするのかも知れないと思った。
考えてみれば当たり前なのだが、琵琶湖には波が立たないのだった。波打ち際はチャプチャプというささめくような音しかしない。高知の浜で感じたような体躯に沁みるような動的感覚は起こらない。静かに水面が揺れているだけ。それが湖国の水風景なのだと、この歳になって初めて気がついた。自転車で走っているばかりでは気づけない、本当の湖国。