nagajisの日不定記。
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大正末期にJESとして210mm×100mm×60mmというサイズが定められたけれども、すぐにこれがスタンダードになるようなことはなかった。なんでなんだぜ? と思っていたが、ようするに政府購入の煉瓦についてJES順守を求めただけで一般用途にはそれを強制しなかったからだ。T14の商工省告示第12号。
●官報第3922号(大正14年9月18日)
商工省告示第12号
政府に於て購入し又は政府の注文する工事に使用する普通煉瓦は左の規格に依る但し已むことを得ざる事由ある場合は此の限に在らず
大正14年9月18日
商工大臣 片岡直温
外務大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 若槻礼次郎
大蔵大臣 浜口雄幸
陸軍大臣 宇垣一成
海軍大臣 財部彪
司法大臣 江木翼
支部大臣 岡田良平
農林大臣 早速整爾
逓信大臣 安達謙蔵
鉄道大臣 仙石貢
普通煉瓦
第一条 本規格は粘土を使用原料として焼成したる普通煉瓦に適用す
第二条 標準寸法は次の通りとす
長 210mm
幅 100mm
厚 60mm
公差は長及幅に於て±3%厚に於て±4%とす第三条 品等は次の4種に之を区分す
1.上焼一等
2.上焼二等
3.並焼一等
4.並焼二等
上焼は焼度良好にして之を打ては金属性の清音を発し吸水率14%以下、耐圧力150kg/cm2以上を有するもの
並焼は焼度普通にして吸水率18%以下、耐圧力100kg/cm2位上を有するもの 一等は形状良好にして割れ又は疵極めて少きもの
二等は形状普通にして大なる割れ又は疵なきもの
第4条 受渡に付特に前条の吸水率及耐圧力の検定を行う旨の協定ありたるときは次の試験法に依りて之を行う
1.試料は特に協定なき限り煉瓦5,000個又は其の端数毎に各種試験に付各5個を取り試験成績は5個の平均値を以て表わすものとす
2.吸水率試験法
煉瓦を空気浴槽に入れ槽内の温度を130℃に保ち5℃以上の差異なき儀注意しつつ乾燥し2時間毎に煉瓦を取出して熱きまま秤量し其の重量に差異なきに至らば之を乾燥煉瓦の重量とし次に煉瓦が常温に冷却するを待ちて深さ1cmの淡水中に24時刊平に浸し更に24時間煉瓦の上面上3cmの淡水中に浸したる後之を取出して湿布にて手早く其の表面を拭い直に秤量して得たる結果を飽水煉瓦の重量とし次式に依り吸水率を算出す但しg未満は秤量せず
吸水率=〔(飽水煉瓦の重量-乾燥煉瓦の重量)/乾燥煉瓦の重量〕×100
3.耐圧力試験法
煉瓦を長手の中央にて半分に横断し其の切断小口を互に反対に向け積み重ね此の間を純「ポルトランド・セメント・モルタル」の薄層にて接合し尚上下受圧面を平行ならしむる為純「ポルトランド・セメント・モルタル」を薄く塗布し約7日間湿気ある槽内に置き該「モルタル」を固結せしめ常温にて乾燥したる後耐圧試験を行い崩壊したるときの荷重を検し次式に依り耐圧力を算出す耐圧力kg/cm2=崩壊したる時の荷重/受圧面の平均面積
しかも煉瓦という素材はT14頃にはもう落ち目になりつつあった。以前みたいに何十万個何百万個というまとまった数の発注受注は少なくなっていた(横浜市上水道のような例外はあっただろうが)。大口受注で生計を立てていた会社は早いうちからテラコッタとかタイルとか空洞煉瓦とか舗装煉瓦とかに軸足を移していて、わざわざJESサイズで作ろうというところはかえって小回りの効く中小会社くらいしかなかったのではないだろうか。そうしてJESは普及しないまま戦後を迎えたと。
明らかに戦前のものだとわかるJISサイズの煉瓦はまだ見たことがない。見たことがないが、上記の状況を想像することによって出自を仮定したいJIS煉瓦with刻印は見つかった。階上屋の建て増しは危ないけれども……そんくらいしないと泉南の刻印は整理できぬ。これが一点突破の秘孔になるだろうか。
男里川にかかる平野橋という旧橋のたもとで休憩していたら、足元の湾処に引沈んでいた木に亀が集まってきた。橋さっきこのを渡っていきたにジャボンジャボンと音がしていたから、のんびり甲羅干しをしているところへ私が通りかかり、驚いて水中に逃散したあと、甲羅干し再開のためにまた集まってきたもののようだった。そうして亀無き二本の流木を初期状態として五匹の亀が鈴なりになるまでの一部始終を眺めて過ごしたのだった。よほど歩き疲れていたのか。いやそうじゃないな、立ち去るタイミングを逸してしまうほど適度な感覚で次々とやって来たものだから思わず見とれてしまったのだ。
初期状態。右の流木は短いが突き出し角度がそれほど急でなく全体的に水面近くにある。とっさの時に逃げやすそうな場である。左の流木は湾処の州にかかる形で沈んでいて、あまり登り過ぎると陸に上がってしまう。右の流木を流木ア、左を流木イと呼ぶことにする。また亀はすべて流木アの右方から泳いで登場する。
最初の一匹は流木アに取り付いた。そうして水辺に近いあたり、後ろ足が水に浸かるか浸からないかという位置で停止した。なお亀の絵を書くのが面倒だったので亀崎煉瓦の刻印図を流用した。
二匹目の亀も流木アに取り付いた。そうして先にあがっていた亀1を軽く押し上げて我がスペースを確保する。後ろから小突かれた亀1はさほど嫌がるそぶりもなく、むしろそれをきっかけとしてずんずん登っていってしまった。亀2のほうがかえって動かない。体半分を水に浸す位置で静止しそれっきりになってしまう。
三匹目の亀登場。彼は流木アの混雑を見て取ったのか、それを悠々然と迂回して流木イのほうに取り付いた。そうして我が物顔で最適位置を確保。なんだかとても賢いように思えたことだった。
そこへ登場した4匹目の亀も、混んでいない流木イへゆくかと思ったが、そんなこともなく、亀1と亀2の間に無理無理と割り込んで登ってしまった。流木は水面から結構高いところにあるように見えたのだが。よく登れたものだと感心する(順番抜かしは感心しないが亀にとっては死活問題であるのだろうしそもそもそういうモラリティーが亀界隈にあるはずもない)。
最後に登場した亀5の流木アに取り付く隙はない。特段戸迷うようなこともなく流木イへ向かっていって取り付くが、先客たる亀3が頑として動かないためか下半身が水に浸かる位置に留まっていた。
後続のためにスペースをあけてやる亀1のような優しい亀がある一方で、頑として動かない亀3のようなものもあり、抜け面なく割り込んですまし顔な亀4みたいなものもいる。しかし一番鈍臭いのは亀2だろう。亀1が空きを作ってくれていたのだからさっさとそこを詰めれば良かったのだ。亀5は参加が遅れたための不利位置に甘んじなければならなかった。仕方ないことである。もしかしたらこういう席取りは日常茶飯事であり亀3が亀5を演じたり亀1になったりするような毎日を繰り返しているのかも知れない。
薄く筋を引いた絹雲がたなびいているだけの青い空と若干湿り気を帯びた空気に夏のかけらを感じるような昼下がりにとある川で繰り広げられていた亀の席取りゲーム。それをぼんやり眺めて過ごしたnagajis。うん。奇妙なポテンシャルなど微塵も介在しておらぬ。
奇妙なポテンシャルの有無はともかく、こういった野の生態を淡々と見ているのも、またそれを淡々と報告調にあげているのも好きですよ。<br>個人的にはこういうのが癒されると思ってる。<br><br>そしてその裏では接する人間社会に対して溜まった、鬱屈した澱の様なものがそろそろ限界点に来ているのだろうなあ。という事を自覚したりするワケですが。<br><br>そろそろ野良猫なり亀なり野鳥なり見てデトックスしないとな・w・